特定技能「介護」完全ガイド:採用から資格取得まで詳しく解説

特定技能「介護」完全ガイド:採用から資格取得まで詳しく解説

日本の高齢化社会が進む中、特定技能介護分野における人材不足は深刻な問題となっています。この課題に対応するため、2019年に新たな在留資格「特定技能」が創設されました。本記事では、特定技能「介護」について詳しく解説し、外国人介護人材の受入れに関する重要な情報をお伝えします。

1. 特定技能「介護」の基礎知識

特定技能制度の概要

特定技能は、人手不足が深刻な12分野(14業種)で外国人材を受け入れるための在留資格です。介護分野もその一つとして指定されており、介護分野における特定技能を持つ外国人が日本の介護現場で働く新たな選択肢となっています。

特定技能制度の主な目的は以下の通りです。

  1. 深刻な人手不足への対応

  2. 外国人材の適切な受入れと共生社会の実現

  3. 日本の産業競争力の維持・向上

日本の介護業界の現状

日本の高齢化は急速に進んでおり、2025年には65歳以上の人口が総人口の30%を超えると予測されています。これに伴い、介護需要は増加の一途をたどっています。

一方で、介護人材の不足は深刻化しており、厚生労働省の推計によると、2025年には約32万人の介護職員が不足すると言われています。この状況を改善するためには、外国人介護人材の活用が不可欠となっています。外国人労働者の受け入れは、特に介護分野において労働力不足を緩和する重要な役割を果たしています。

参照:第8期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について(厚生労働省)

在留資格別の比較

介護分野における外国人材の受入れには、介護分野における特定の規定や要件が存在します。それぞれの特徴を比較してみましょう。

特定技能「介護」EPA介護福祉士技能実習在留資格「介護」
業務の制限制限あり(訪問系サービス不可)制限あり(介護福祉士の資格を取得すれば、一部訪問系サービスへの従事が可能)制限あり(訪問系サービス不可)制限なし
在留期間上限5年原則4年
「介護福祉士」の資格取得後は制限なし
技能実習1~3号あわせて最長5年制限なし
日本語能力入国前の試験で、技能及び日本語能力を確認  インドネシア・フィリピン……N5
ベトナム……N3
入国時N4、2号に移行時にN3介護福祉士養成校の入学時点で、N2を要件としているところが多い
母国での能力や学歴個人による。要件はなし。ただ、上記試験に合格するか、技能実習からの移行の場合は2年以上の実務経験が必要。母国で看護系学校を卒業しているか介護士として認定されている。監理団体の選考基準による。個人による。要件はなし。
メリット実務経験か、試験合格が条件になっているので、基礎的な介護の知識を持っていると言える。現場に出るまでの講習期間が数時間程度と、かなり短くて済む。定期報告は3ヶ月に1回と報告の負担が少ない。母国での学歴などが条件になっており、人材の質が一定している。制度の目的が介護福祉士の育成なので、国からの支援もある。国内の監理団体が研修などを行ってくれる。外国人の日本語能力が高い場合が多い。介護の専門知識がある。 訪問系サービスを行うことができる。
デメリット訪問系サービスを行うことができない。外国人支援を内製化できない場合、登録支援団体に支払う料金が毎月発生する。採用が決まってから介護の現場に出るまでの講習が1年程度と長い。また、介護福祉士の資格取得のためには実務者研修450時間が必要。訪問系のサービスを行うことができない。配属後6か月間は人員配置に含められない。資格や経験は要件になっていないので、介護の現場に出るまでに3カ月程度の講習が必要。技能実習状況は日誌に毎日記録。監査報告書は3ヶ月に1回、事業報告書、実施報告書は年に1回必要。受け入れ調整機関がないので、介護施設が自主的に採用活動をしなければならない。
転職可能可能不可可能

特定技能「介護」は、他の在留資格と比べて比較的短期間で来日し、介護現場で働くことができるという特徴があります。

特定技能「介護」の受入状況

令和4年6月末時点で、特定技能「介護」の受け入れ人数は10,411人でした。しかし、12月末までに16,081人に増加し、2023年6月末には21,915人に達しています。これにより、直近2年間で2倍以上の増加を示し、介護分野において深刻な人手不足であることが分かります。また、国籍別では令和5年6月末時点でベトナムが7,092人と最も多くを占めています。

外国人を受け入れるプロセスは、特定技能制度を利用することで、介護分野における外国人労働者の受け入れがスムーズに行えます。この制度を活用することで、介護現場の人手不足を解消し、質の高いケアを提供することが可能になります。

参照:分野別特定技能在留外国人数の推移(出入国在留管理庁)

2. 特定技能「介護」の資格取得要件

技能介護の資格を取得するためには、以下の4つのルートがあります。

1. 介護技能と日本語能力試験の合格

このルートでは、以下の2つの試験に合格する必要があります:

  1. 介護技能評価試験

  2. 日本語能力試験N4以上 または 介護日本語評価試験

特定技能介護のルートでは、介護技能評価試験は基本的な介護の知識と技術を問う試験です。一方、日本語能力は、日常会話レベルのコミュニケーションが可能であることが求められます。

合格要件以下の技能試験と日本語試験(2種)に合格すること
技能試験:「介護技能評価試験」
日本語試験1:「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験N4以上」
日本語試験2:「介護日本語評価試験」

「介護能力評価試験」
技能水準:介護業務の基盤となる能力や考え方などに基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を自ら一定程度実践できる。合格者は介護分野において一定の専門性・技能を用いて即戦力として稼働するために必要な知識や経験を有するものと認められる。
試験言語:現地語
実施主体:厚生労働省が選定した機関
実施方法:コンピューター・ベースト・テスティング(CBT)方式
「国際交流基金日本語基礎テスト」能力水準:ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有する。
実施主体:独立行政法人国際交流基金
実施方法:コンピューター・ベースト・テスティング(CBT)方式
「日本語能力試験(N4以上)」能力水準:ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有する。
実施主体:独立行政法人国際交流基金及び日本国際教育支援協会
実施方法:マークシート方法
「介護日本語評価試験」能力水準:介護現場で介護業務に従事する上で支障のない程度の能力を有する。
実施主体:厚生労働省が選定した機関
実施方法:コンピューター・ベースト・テスティング(CBT)方式

2. 介護福祉士養成施設の修了

介護福祉士養成施設を修了することで、特定技能「介護」の資格を取得できます。このルートのメリットは、より専門的な知識と技術を習得できる点です。また「社会福祉士及び介護福祉法」に認可された介護福祉士養成施設を修了した者は、上記の試験を免除されます。

さらに、介護福祉士養成施設を修了した外国人の受入れに関しては、特定技能「介護」の資格を持つ外国人労働者を受け入れるための手続きと要件があります。企業は介護分野の特定技能協議会に参加するための必要なステップを踏む必要があります。

3. EPA介護福祉士候補者としての在留期間満了(4年間)

EPAプログラムで来日し、介護福祉士候補者として4年間滞在した場合、特定技能「介護」に移行することが可能です。このルートは、すでに日本での生活経験がある人材にとって有利です。

「EPA介護福祉士候補者」として来日し、厚生労働省が指定する施設で4年間の学びと研修を適切に完了した者は、 上記の試験を免除されます。このプログラムでは、介護福祉士養成施設での学びや同等の条件が整った介護施設での実践を通じて、十分な知識と経験を得ることが期待されます。また、訪日前には一定水準の日本語能力を持ち、訪日後には日本語の研修を経て介護福祉士国家試験に向けた実地実習も行われるため、日本語の能力も十分に証明されます。

4. 技能実習2号の良好な修了

技能実習生として第2号技能実習を良好に修了した場合、特定技能「介護」に移行することができます。このルートは、すでに日本の介護現場での経験がある人材に適しており、十分な介護技能と日本語能力を有していると見なされるため、上記の試験が免除されます。

3. 雇用と採用プロセス

1.特定所属機関(受入れ企業)の要件

特定技能の介護士を受け入れるためには、受入れ企業(介護施設側)にも以下の要件があります。

まず、適切な雇用契約の締結、外国人に対する支援計画の策定と実施、そして特定技能協議会への加入が必要です。また、企業は外国人労働者を受け入れてから4ヶ月以内に「における特定技能協議」に加入する必要があります。特定技能外国人は訪問系サービスには従事できないため、住宅型有料老人ホーム、訪問介護事業所、サービス付き高齢者向け住宅などでは受け入れができません。

2.特定技能人材の採用フロー

特定技能「介護」の人材を採用する流れは以下の通りです。

介護分野における特定技能外国人の受け入れについては、特定技能協議会への参加や必要な手続き、要件を満たすことが求められます。

人材募集・面接

国内採用する場合
候補者は既に特定技能で働いている方、技能実習を修了見込みの方が対象です。自社での募集も可能ですが、多くの場合は登録支援機関や国内の人材紹介会社に依頼することが一般的です。

海外採用する場合
候補者は既に特定技能の資格要件を満たしている方、または今後技能試験や日本語試験を受験予定の方が対象。この場合、通常は海外の送り出し機関に人材募集を依頼するのが一般的です。

雇用契約の締結

内定者が確定したら、法律で定められた基準(業務内容、報酬、労働時間など)に従って、雇用契約を締結します。

支援計画の策定

特定技能外国人を雇用する際には、外国人が日本で安定的に働けるように支援する必要があります。在留資格申請時には、この支援内容を示す支援計画書を提出する必要があります。自社で支援を行うことが困難な場合は、登録支援機関に委託して、支援計画の策定および実施を受け入れ機関に代行してもらうことができます。

以下の内容が、法律で定められている支援内容です。

・事前ガイダンス
労働条件/業務内容/入国手続き等について、オンライン又は対面で説明

・出入国する際の送迎
入国時に空港から事務所又は住居までの送迎
帰国時に空港までの送迎

・住居確保・生活に必要な契約支援
賃貸契約、銀行口座の開設、契約電話の契約などを案内/支援する

・生活オリエンテーション
日本で安定して働くことができるよう、日本のルールやマナー、公共交通機関の利用方法などの説明

・公的手続への同行
必要に応じて、住居地/社会保障/税金の手続きの同行、書類作成の支援

・日本語学習機会の提供
日本語教室の入学案内、日本語学習教材の情報提供など

・相談・苦情への対応
職場や生活上の相談/苦情に対する対応

・日本人との交流促進

・転職支援(人員整理などの整理)
雇用主都合による雇用契約解除の場合は新たな就職先を探す手伝いや必要な行政手続きの情報提供など

・定期的な面談・行政機関への報告
支援責任者が外国人本人及びその上司と定期的に面談を実施し、労働基準法違反などあれば行政機関に報告

3.在留資格申請

支援計画が策定できたら、必要な書類を地方出入国在留管理局に提出します。申請が承認されると証明書が交付され、この証明書を持って候補者本人がビザ申請を行います。在留資格申請の書類作成は、自社で行うこともできますが、行政書士に委託することも可能です。

4. 採用にかかる費用の相場

特定技能外国人の採用には、以下のような費用が発生します。

項目相場備考
人材紹介費(国内人材紹介会社を利用する場合)年収の30~40%
人材紹介費(海外送り出し機関を利用する場合)給与1ヶ月分又は約30万円送り出し国によっては、海外送り出し機関を経由して採用することは必須
生活支援費登録支援機関に月額2~3万円/人
特定技能の書類作成委託費用行政書士に10〜20万円。在留期間更新申請に毎年2~5万円程度発生
健康診断費約1万円
渡航費用10〜15万円出身国により異なる

これらの費用は、採用方法や送り出し国によって異なります。

5. 送り出し国のルールと注意点

特定技能「介護」の送り出し国は、二国間協定を結んでいる国に限定されています。主な送り出し国には、フィリピン、インドネシア、ベトナムなどがあります。

各国には独自の規制があるため、採用の際には送り出し国のルールにも注意を払う必要があります。

まとめ

特定技能「介護」は、日本の介護人材不足を解消するための重要な制度です。外国人材の受入れにより、介護現場の人手不足解消と質の高いケアの提供が期待されています。

一方で、言語や文化の違いによるコミュニケーションの課題や、受入れ体制の整備など、解決すべき問題もあります。今後は、外国人材と日本人スタッフが協力し合い、より良い介護環境を作り上げていくことが求められます。

よくある質問(FAQ)

  1. Q: 特定技能で来日した外国人は、介護福祉士の資格を取得できますか?
    A: はい、可能です。特定技能「介護」で働きながら、介護福祉士の国家試験に挑戦することができます。
  2. Q: 特定技能の在留期間は延長できますか?その条件は?
    A: 特定技能1号の在留期間は通算で5年です。5年を超えて滞在するには、特定技能2号への移行が必要ですが、現時点で介護分野では特定技能2号は認められていません。
  3. Q: 特定技能で働く外国人の給与水準はどのくらいですか?
    A: 日本人と同等以上の給与水準が求められています。具体的な金額は地域や経験によって異なりますが、一般的に月給20万円程度が目安とされています。
  4. Q: 特定技能「介護」の受け入れ人数に上限はありますか?
    A: 現時点では、特定技能「介護」の受入れ人数に明確な上限は設けられていません。
  5. Q: 特定技能で働く外国人が、別の介護施設に転職することは可能ですか?
    A: 基本的に可能です。ただし、在留資格の変更手続きが必要となります。また、転職の際は、適切な支援が受けられる事業所を選ぶことが重要です。

以上で、特定技能「介護」に関する詳細な解説を終わります。この制度を活用することで、日本の介護現場がより活性化し、質の高いケアが提供されることを期待しています

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