特定技能 「航空」:資格取得から採用までの完全ガイド

特定技能 「航空」:資格取得から採用までの完全ガイド

はじめに

航空業界では、近年のインバウンド需要の増加に伴い、深刻な人手不足が問題となっています。この課題に対応するために、日本政府は2019年4月に「特定技能」という新たな在留資格を導入しました。本記事では、特に航空分野における特定技能の概要、資格取得方法、そして採用プロセスまでを詳しく解説します。

航空分野の特定技能は、空港グランドハンドリングと航空機整備の二つの業務を対象としています。この制度により、外国人材が即戦力として日本の航空業界で活躍できる道が開かれました。

特定技能とは

特定技能制度は、深刻な人手不足に悩む12の産業分野で外国人材を受入れるために創設されました。航空分野もその一つです。

特定技能には「1号」と「2号」の2つのカテゴリがあります。特定技能1号は最長5年の在留が可能であり、家族の帯同は認められません。一方、特定技能2号は在留期間の更新に制限がなく、家族の帯同も可能です。特定技能の在留資格を取得するためには、特定の試験に合格する必要があります。

航空分野の現状

航空分野の現状を見ると、2012年から2017年の5年間で国際線着陸回数は約1.5倍に増加しました。この需要の急増に対し、人材の確保が追いついていないのが実情です。2023年6月末時点で、特定技能「航空」の受け入れ人数は342人となっています。

特定技能「航空」の受入人数

特定技能「航空」では、今後5年間で最大2,200人を受入れる想定でした。

しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による大きな経済情勢の変化を踏まえ、令和5年度末までは、当面、1号特定技能外国人の受入れ見込数を最大1,300人とし、これを1号特定技能外国人の受入れの上限となりました。

業種2022年8月以前 (見直し前)2022年8月以降 (見直し後)
介護60,000人50,900人
ビルクリーニング37,000人20,000人
製造3分野31,450人49,750人
建設業40,000人34,000人
造船・舶用工業13,000人11,000人
自動車整備7,000人6,500人
航空業2,200人1,300人
宿泊業22,000人11,200人
農業36,500人36,500人
漁業9,000人6,300人
飲食料品製造業34,000人87,200人
外食業53,000人30,500人

特定技能「航空」の資格取得要件

国土交通省によれば、特定技能1号「航空」の人材要件は以下の通りです。

>空港グランドハンドリング業務及び航空機整備業務ができる人材

a) 技能水準の要件

航空分野技能評価試験に合格する必要があります。

この試験は、空港グランドハンドリング業務と航空機整備業務の2種類があり、それぞれ筆記と実技試験があります。

航空分野技能評価試験は筆記と実技に分かれてます。出題項目は以下の通りです。

<空港グランドハンドリング業務>社内資格を有する指導者やチームリーダーの指導・監督の下、空港における航空機の誘導・けん引の補佐、貨物・手荷物の仕分けや荷崩れを起こさない貨物の積 みつけ等ができるレベルであることを確認する。
<航空機整備業務>整備の基本技術を有し、国家資格整備士等の指導・監督の下、機体や装備品 等の整備業務のうち基礎的な作業(簡単な点検や交換作業等)ができるレベル であることを確認する。

b) 日本語能力の要件

日本語能力試験N4以上、あるいは国際交流基金日本語基礎テストに合格する必要があります。

<日本語能力試験>年2回実施される「日本語能力試験」で、「N4」以上の成績を取る必要があります。試験の評価はN1からN5まであり、N1がもっとも高難度です。N4は、「基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる」レベルです。
<国際交流基金日本語基礎テスト>日本の生活場面でのコミュニケーションに必要な日本語能力を測定するテストです。「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力」があるかどうかを判定します。

c) 技能実習2号からの移行

技能実習2号を良好に修了した場合、上記の試験が免除され、特定技能1号への移行可能です。

「技能実習2号」とは、1993年に導入された「技能実習」ならびに「研修」制度です。開発途上国の人材が日本で学んだ技能や技術を本国の経済発展に生かす目的で設けられました。しかし技能実習生は技能の習得が狙いのため、一定期間日本で働いたあとは、必ず自国へ帰らなければなりません。

ところが今回、新たに「特定技能」の制度が整備されたことで、「技能実習」から「特定技能」への移行が可能になり、日本で在留し続けることもできるようになりました。

技能実習から特定技能の移行に必要とされる主な要件は以下の通りです。

1.技能実習2号を良好に修了

2. 技能実習での職種/作業内容と、特定技能1号の職種が一致

「空港グランドハンドリング」技能実習2号を修了した場合(すでに技能実習3号の方も含む)、特定技能の試験が免除されます。技能実習1号に関しては、試験に合格するか技能実習2号を修了する必要があります。

特定技能「航空」で許可される業務内容

国土交通省によれば、「空港グランドハンドリング業務及び航空機整備業務」が認められている業務特定技能です。

詳細は以下の通りです。貨物取扱業務も空港グランドハンドリング支援業務の一部として含まれます。

<空港グランドハンドリング業務>・航空機地上走行支援業務(航空機の駐機場への誘導や移動など)
・手荷物・貨物取扱業務(手荷物・貨物の仕分け、ULDへの積付、取り降し・解体など)
・手荷物・貨物の搭降載取扱業務(手荷物・貨物の航空機への移送、搭降載など)
・航空機内外の清掃整備業務(客室内清掃、遺失物等の検索、機用品補充や機体の洗浄など)
<航空機整備業務>・運航整備(空港に到着した航空機に対して、次のフライトまでの間に行う整備など)
・機体整備(通常1~1年半毎に実施する、約1~2週間にわたり機体の隅々まで行う整備など)
・装備品・原動機整備(航空機から取り下ろされた脚部や動翼、 飛行・操縦に用いられる計器類等及びエンジンの整備など)

雇用形態と報酬

雇用形態は直接雇用のみ認められ、派遣は認められません。
報酬は、日本人と同等以上であることが求められます。

申請書類

1.航空分野技能評価試験の合格証明書

2.日本語能力を証するものとして次のいずれかの写し
・国際交流基金日本語基礎テストの合格証明書
・日本語能力試験(N4以上)の合格証明書

3.受入れ先企業が航空分野特定技能協議会の構成員であることの証明書

特定技能「航空」の採用プロセス

STEP1: 人材募集と面接

特定技能を採用するには、以下の2つの方法が考えられます 。

1. 国内から採用する場合

候補者はすでに特定技能で働いているか、技能実習を修了見込みの場合が多いです。この場合、自社で人材を募集することも可能ですが、一般的には登録支援機関や国内の人材紹介会社に依頼することが多いです 。

2. 海外から採用する場合

候補者は特定技能の資格要件を満たしているか、将来的に技能試験や日本語試験を受験する予定の場合があります。この場合、海外送り出し機関に人材募集を依頼することが一般的です 。

どちらの場合でも、候補者情報をもとに書類審査を行い、オンラインまたは対面で面接を実施し、採用の決定を進めていきます 。

STEP2:雇用契約を結ぶ

内定者が決まったら、法律で規定された基準(業務内容、報酬、労働時間など)に従い、雇用契約を締結します 。

STEP3:支援計画を策定する

特定技能外国人を雇用する場合は、彼らが日本で安定的に働けるように支援を行う必要があります。在留資格申請時に、この支援の方法を示す支援計画書を提出する必要があります。支援を自社で実施するのが難しい場合、登録支援機関に委託し、支援計画の策定と実施を代行してもらうことができます。 

法律で定められている支援内容は以下の通りです 。

・事前ガイダンス
オンラインまたは対面で、労働条件、業務内容、入国手続きなどについて説明を行います 。
出入国時の送迎
入国時には、空港から事務所または住居までの送迎を提供し、帰国時には空港までの送迎を行います。

・住居確保と生活支援
賃貸契約や銀行口座の開設、契約電話の手続きなど、生活に必要な契約手続きを案内し、支援します 。

・生活オリエンテーション
日本での安定した生活をサポートするため、日本のルール、マナー、公共交通機関の利用方法などを説明します。

・公的手続きへの同行
住居地、社会保障、税金などの手続きが必要な場合、同行し、書類作成などの支援を行います。

・日本語学習機会の提供
日本語教室の入学案内や日本語学習教材の情報提供など、日本語学習をサポートします 。

・相談と苦情への対応
職場や生活上の相談や苦情に対応し、適切な支援を提供します。

・日本人との交流促進
地域イベント(お祭りや行事など)の案内などを通じて、日本人との交流を促進します 。

・転職支援(人員整理などの場合)
雇用主都合による雇用契約解除の場合、新たな就職先を探す手助けや、必要な行政手続きの情報提供を行います 。

・定期的な面談と行政機関への報告
支援責任者が外国人本人およびその上司と定期的な面談を実施し、労働基準法違反などがあれば行政機関に報告します 。

STEP4:在留資格申請

支援計画が策定されたら、必要書類を地方出入国在留管理局に提出し、在留資格の申請を行います。申請が承認されると、証明書が交付され、候補者はこの証明書を持ってビザ申請を行います。在留資格申請の書類作成は、自社で行うことも可能ですが、行政書士に委託することもできます 。

受け入れ企業(特定所属機関)の要件

特定技能外国人を雇用する企業には、以下の要件が課されます。特定技能所属機関として、空港管理規則に基づく事業運営の承認を取得し、「航空分野特定技能協議会」の会員であることが求められます。また、協議会の活動に協力し、特定技能を持つ外国人労働者からの要請に応じて、就労経験証明書を提供する必要があります。

航空分野特定技能協議会への加入

受け入れ企業は、特定技能外国人を雇用するために、該当分野ごとに設けられた協議会(航空分野の場合は「航空分野特定技能協議会」)に加入する必要があります。この協議会への加入がないと、外国人の受け入れが認められません。したがって、外国人が入国してからの4ヶ月以内に、必ず加入手続きを行う必要があります。

空港管理規則に基づく営業承認や航空法に基づく認定を受けていること

受け入れ企業は、特定技能外国人を雇用するために、航空分野においては、空港管理規則に基づく当該空港での営業承認を受けた事業者、航空運送事業者、または航空法に基づき国土交通大臣から認定を受けた航空機整備等の事業場を有する事業者である必要があります。

外国人材への適切な支援の提供

特定技能制度を通じて海外人材を雇用する場合、受け入れ企業は海外人材に対して適切な支援を提供しなければなりません。受け入れ企業がサポートできない場合、登録支援機関に支援業務を委託することが求められます 。

採用費用の相場

特定技能の採用に伴う費用は以下の通りです 。

項目相場備考
人材紹介手数料(国内人材紹介会社を利用する場合)年収の30~40%
人材紹介費(海外送り出し機関を利用する場合)給与1ヶ月分又は約30万円送り出し国によっては、海外送り出し機関を経由して採用することが必須になっている
生活支援費登録支援機関に月額2~3万円/人
特定技能の書類作成委託費行政書士に10〜20万円。在留期間更新申請に毎年2~5万円程度発生
健康診断費約1万円
渡航費用10〜15万円出身国により異なる

まとめ

特定技能「航空」は、日本の航空業界における人材不足を解消するための重要な制度です 。外国人材の活用により、増加する需要に対応し、業界の持続的な成長を支えることが期待されます。

一方で、言語や文化の違いによるコミュニケーション課題、適切な支援体制の構築など、克服すべき課題もあります 。しかし、これらの課題を乗り越えることで、より多様性に富んだ、競争力のある航空業界の実現につながるでしょう。

よくある質問(FAQ)

Q: 特定技能「航空」で働く外国人の主な出身国は?
A: 2023年6月末時点で、フィリピンが215人で最多となっています。

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