特定 技能 「外食」完全ガイド:資格取得から採用まで詳しく解説

特定 技能 「外食」完全ガイド:資格取得から採用まで詳しく解説

近年、日本の外食業界では深刻な人手不足が顕著な課題となっています。この問題に対処するため、2019年4月に新たな在留資格「外食業特定技能」が導入されました。本記事では、特定技能「外食」について詳しく解説し、資格取得から採用までの重要な情報をご紹介します。

特定技能「外食」とは

1.特定技能制度の概要

特定技能は、14の産業分野で人手不足に直面する日本が外国人材を受け入れるために導入した新しい在留資格です。この制度は、特定技能1号と2号があります。特定技能1号は最長5年間の在留期間で、全14分野で適用されます。一方、特定技能2号は在留期間の更新が可能で、より高度な技能を要する2分野(建設業と造船・舶用工業)のみで適用されています。

参照:特定産業分野別割合(出入国在留管理庁)

2. 外食業界の現状と人手不足

外食業界では、訪日外国人旅行客の急増により、外食業分野での人手不足が深刻化しています。農林水産省のデータによれば、2013年以降、外食関連の全ての職種で有効求人倍率が上昇し、外食業の求人倍率は他の産業を上回る高水準を維持しています。2020年には新型コロナウイルスの影響で大幅に減少しましたが、現在でも求人倍率は2倍以上あり、人手不足の問題は解消されていません。

企業が求める労働需要に対して実際に確保できていない人数を示す欠員率に関しても、宿泊業・飲食サービス業は他の産業よりも高く、深刻な人手不足が浮き彫りになっています。

外食業での人手不足の原因の一つは、業務の特性にあります。手作り感やホスピタリティなど、外食業特有の価値を提供するためには、状況に応じた臨機応変な対応が求められるため、機械化による省力化が難しい状況です。このため、業務に支障をきたしている飲食店も少なくありません。将来的には、約29万人の人材不足が懸念されており、その解決策として特定技能を含む海外人材の活用が模索されています。

こうような背景から、外食業界では約18万人の外国人が活躍しています。ただ、外食業に従事する外国人の在留資格は、永住者を除くと「資格外活動(留学生や家族帯同者など)」が大半を占めています。近年は、外国人留学生のための就業時間の上限超過や卒業後の不法就労が問題になり、政府は「留学」の在留資格が厳格になりました。このため、今後は特定技能の活用が一層進展することが期待されています。

3. 特定技能「外食」の受入状況

2023年6月末時点で、特定技能「外食」の在留資格で働く技能外国人の数は8,842人となっています。国籍別ではベトナムからの人材が最も多く、フィリピン、インドネシアなどがそれに続いています。今後5年間で最大30,500人の受け入れが見込まれており、外食業界における重要な人材供給源となることが期待されています。

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特定技能「外食」の資格取得要件

1. 必要な知識・技能

特定技能「外食」の資格取得するためには、以下の知識・技能が必要になります。

  • 食品衛生に関する技能・知識

  • 調理器具などの扱いや飲食物の調理に関する技能・知識

  • 接客に必要な日本語レベル、接客に関するスキル 技能・知識

これらの能力は、安全で質の高い飲食サービスを提供するために不可欠です。

2. 資格取得の2つの方法

特定技能「外食」の資格取得ためには、以下の2つの方法があります。

  1. 外食業技能測定試験(1号技能測定試験)と日本語試験に合格する

  2. 医療・福祉施設給食製造分野の技能実習2号を良好に修了する

3. 試験の詳細

外食業技能測定試験は、「衛生管理」、「飲食物調理」、「接客全般に関する知識」を問う筆記試験です。日本語能力については、日本語能力試験N4以上または国際交流基金日本語基礎テストの合格が必要です。これらの試験は、インドネシアやフィリピンなど計6ヶ国と国内試験としても実施されています。

特定技能「外食」の業務内容と雇用条件

1. 許可される業務内容

特定技能「外食」では、以下の業務が業特定技能1として認められています。

  • 接客、飲食物調理、店舗管理

  • 付随的な関連業務 (例)店舗における物品の販売等、店舗において原材料として使用する農林水産物の生産 ※風営法に基づく接待は認められていません。またラブホテル、簡易宿所及び下宿では特定技能外国人を雇用できません。

2. 雇用形態と報酬

特定技能「外食」は、直接雇用のみが認めら、派遣形態は認められていません。雇用期間は「特定技能1号」の場合、最長で5年間です。また報酬は、日本人従業員と同等以上の水準であることが求められます。

特定技能「外食」人材の採用プロセス

1. 受入れ企業の要件

特定技能「外食」の人材を採用する企業には、以下の要件が必要になります。

食品産業特定技能協議会への加入

受け入れ企業は国土交通省が定めた「食品産業特定技能協議会」への加入が必須です。特に、飲食料品製造業に従事する企業はこの協議会への加入が求められます。協議会に未加入の企業は外国人の受入れが認められないので、外国人の入国後4ヶ月以内に必ず手続きを行う必要があります。

外国人材に対する適切な支援の提供

特定技能制度での海外人材を雇用する際は、定められた支援を適切に行う必要があります。自社での支援が困難な場合は、登録支援機関に委託できます。

2. 採用の流れ

1.人材募集・面接(国内採用または海外採用)

国内で特定技能外国人を採用する際には、すでに特定技能で働いている方や技能実習を修了見込みの方が対象です。自社での人材募集も可能ですが、多くの場合は登録支援機関や国内の人材紹介会社を活用することが推奨されています。

海外からの採用の場合、候補者はすでに特定技能の資格要件を満たしているか、または将来的に技能試験や日本語試験を受ける予定の方が対象です。通常、このプロセスでは、海外の送り出し機関に人材募集を委託します。

両方のケースで、候補者の情報を元に書類審査を行い、その後にオンラインまたは対面での面接を実施し、最終的に採用を決定します。特定技能の試験日を考慮してスケジュールを調整することが重要です。

雇用契約締結

内定者が確定しましたら、法的基準(業務内容、報酬、労働時間など)に基づいて雇用契約を締結します。

支援計画策定

特定技能外国人を雇用する際は、外国人が安定して日本で働けるように支援することが不可欠です。在留資格申請時には、この支援を明確に示した支援計画書を提出する必要があります。自社での支援が難しい場合は、登録支援機関に支援計画の策定および実施を委託することも可能です。

以下の内容が支援内容になります。

  1. 事前 ガイダンス
    ・業務内容、労働条件、入国手続きなどについて、オンラインまたは対面で詳しく説明します。

  2. 出入国時の送迎
    ・入国時:空港から事務所または住居までの送迎。
    ・帰国時:空港までの送迎。

  3. 住居確保 および 生活契約支援
    ・賃貸契約や銀行口座の開設、電話の契約などを案内し、支援します。

  4. 生活 オリエンテーション
    ・日本で安定した働き方を支援するために、日本のマナーやルール、公共交通機関の利用方法などを詳しく説明します。

  5. 公的手続きの 同行
    必要に応じ、住居地や社会保障、そして税金の手続きに同行し、書類作成を支援します。

  6. 日本語学習の 機会提供
    ・日本語教室の入学案内や日本語学習教材の情報提供などをする。

  7. 相談・苦情への対応
    ・職場や生活上の相談、苦情に対する対応。

  8. 日本人との 交流促進
    ・地域イベント(祭りやイベント)の案内

  9. 転職支援 (人員整理などの場合)
    雇用主都合での契約解除の際には、新しい就職先を見つける支援や必要な行政手続きの情報提供。

  10. 定期的な面談および行政機関への 報告
    ・支援責任者は定期的に外国人本人およびその上司と面談し、労働基準法の遵守状況を確認し、必要に応じて違反があれば行政機関に報告します。

これらの支援内容を遵守することで、特定技能外国人が日本で安定して働くことができるようになります。

在留資格申請

支援計画が策定された後、地方出入国在留管理局に必要書類を提出します。申請が受理されれば証明書が交付され、これを利用して候補者本人がビザ申請を進めます。在留資格申請の書類作成は自社で対応可能ですが、行政書士に依頼することも選択肢です。

3. 採用にかかる費用

特定技能「外食」人材の採用費用の相場は以下のようになります。

各費用費用相場備考
人材紹介費(国内人材紹介会社を利用する場合)年収の30~40%
人材紹介費(海外送り出し機関を利用する場合)給与1ヶ月分又は約30万円送り出し国によっては、海外送り出し機関を経由して採用することは必須
生活支援費登録支援機関に月額2~3万円/人
特定技能の書類作成委託費用行政書士に10〜20万円。在留期間更新申請に毎年2~5万円程度発生
健康診断費約1万円
渡航費用10〜15万円出身国により異なる

4. 送り出し国のルールと注意点

特定技能を海外から採用する際には、日本の法律だけでなく、送り出し国の規制も注意が必要です。特に東南アジアの多くの国では、その国が認可した送り出し機関を介しての採用が義務付けられています。例えば、フィリピンではPOEAやPOLOという政府機関の承認を受け、POEAが認定した現地の送り出し機関を利用する必要があります。

この規定は、送り出し国が自国民の安全と生命を守るために設けたものです。送り出し機関を介さずに採用を行うと、受け入れ企業だけでなく、候補者にも罰則が科されることがあるため、十分に注意が必要です。

結論

特定技能「外食」は、外食業界における人材不足の解消する重要な施策です。外国人材の活用により、多様な人材が協力し合う新たな職場環境の創出や、サービスの質の向上が期待されます。他方で、文化・言語の違いで生じるコミュニケーションの課題や、適切な支援体制の整備など、解決すべき問題もあります。

外食業界が持続的に発展していくためには、特定技能「外食」制度を効果的に活用しつつ、外国人材と日本人スタッフが互いに学び合い、成長できる環境を整えていくことが重要です。

よくある質問(FAQ)

  1. Q: 特定技能「外食」の在留期間は延長できますか?
    A: 特定技能1号の在留期間は最長5年間です。現時点では、外食分野での特定技能2号への移行は認められていないため、5年を超えての延長はできません。

  2. Q: 特定技能で働く外国人の給与水準はどのくらいですか?
    A: 日本人と同等以上の給与水準が求められています。具体的な金額は地域や経験によって異なりますが、最低賃金以上であることが条件です。

  3. Q: 特定技能「外食」の受け入れ人数に上限はありますか?
    A: 外食分野では、今後5年間で最大30,500人の受け入れが見込まれています。ただし、この数字は経済状況などにより変動する可能性があります。

  4. Q: 特定技能で働く外国人が、別の外食店に転職することは可能ですか?
    A: 可能です。ただし、転職の際は在留資格の変更手続きが必要となります。また、外食分野内での転職に限られます。

  5. Q: 特定技能「外食」から介護福祉士の資格を取得はできますか?
    A: 特定技能「外食」から直接介護福祉士の資格を取得することはできません。ただし、在留資格を「介護」に変更し、必要な要件を満たすことで、介護福祉士の資格取得を目指すことは可能です。

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