特定 技能「ビルクリーニング」:完全ガイド:制度概要から採用方法まで

特定 技能「ビルクリーニング」:完全ガイド:制度概要から採用方法まで

はじめに

近年、日本の労働市場では深刻な人手不足が問題となっています。特に、ビルクリーニング分野では、その影響が顕著に現れています。この課題に対応するため、日本政府は2019年4月に「特定技能」という新しい在留資格を導入しました。

本記事では、特定技能制度の概要とビルクリーニング分野における特定技能の重要性について詳しく解説します。ビルクリーニング業界の現状、資格取得要件、採用方法など、企業の人事担当者や外国人労働者の方々に役立つ情報を提供いたします。

特定技能「ビルクリーニング」の概要

特定技能制度とは

特定技能は、深刻な人手不足に直面する特定の産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人材の受け入れを目的とした在留資格です。ビルクリーニング分野は、この特定技能制度の対象14業種の1つとなっています。

特定技能1号と2号の違い

特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、特定技能1号は在留期間が最長5年で家族の帯同が原則不可、14業種(ビルクリーニングを含む)が対象で、取得には「技能水準」と「日本語能力水準」のクリアが必要。

特定技能2号は在留資格を何度でも更新でき滞在期間に制約がなく家族の同伴が認められており、対象分野は従来の2業種(建設、造船・舶用工業)に加え、2023年6月9日の閣議決定で新たに「ビルクリーニング」など9業種が追加されました。

ビルクリーニング分野の現状

ビルクリーニング分野は、建築物衛生法の対象となる特定建築物が年々増加していることから、ビル・建物清掃員の求人倍率が高い水準で推移しています。平成29年度の求人倍率は2.95倍に達し、人材確保が非常に難しい状況です。平成27年国勢調査によれば、この職種では女性が従業者の70.9%、65歳以上の高齢者が37.2%を占めており、女性や高齢者を積極的に雇用しています。しかし、最近の人手不足により、女性や高齢者が他の分野での就業機会を増やしているため、ビルクリーニング分野への志望者が減少し、人手不足が加速しています。

ビルクリーニング業務が適切に行われないと、建築物の衛生状態が悪化し、利用者の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、特定技能外国人を受け入れて人手不足を解消する必要があります。平成29年度の地域ブロック単位の求人倍率では、中国地方が最高で3.80倍、東北地方が最低で2.03倍と、全国的に人手不足が深刻な状況であることから、特定技能外国人の受け入れが急務です。

このような背景から、ビルクリーニング分野における人材確保の重要性が増しており、特定技能外国人の受け入れが効果的な解決策となります。ビルクリーニング業界は、衛生管理の向上と利用者の健康を守るため、外国人労働者の積極的な採用を進めるべきです。

受入れ上限人数と現状の受入れ状況

当初、ビルクリーニング分野では2019年からの5年間で最大37,000人の受け入れを想定していました。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により、2022年8月以降は受入れ見込数が最大20,000人に変更されました。

2023年6月末時点の特定技能外国人の受入れ状況では、ビルクリーニング分野で2,728人が就労しています。

業種2022年8月以前(見直し前)2022年8月以降(見直し後)
介護60,000人50,900人
ビルクリーニング37,000人20,000人
製造3分野31,450人49,750人
建設業40,000人34,000人
造船・舶用工業13,000人11,000人
自動車整備7,000人6,500人
航空業2,200人1,300人
宿泊業22,000人11,200人
農業36,500人36,500人
漁業9,000人6,300人
飲食料品製造業34,000人87,200人
外食業53,000人30,500人

特定技能と技能実習の違い

特定技能と混同されやすいものとして、技能実習があります。しかし、両者は設立背景や雇用ルールなどで大きく異なるため、その違いを理解しておく必要があります。

主な違いは以下の通りです。

技能実習が国際貢献や技能移転を目的としている一方、特定技能は日本の人手不足解消が目的です。そのため、特定技能は相応程度の知識又は経験が求められることを前提とし、資格取得要件は厳しく、在留期間も長く、転職も可能という点が主な違いです。

技能実習特定技能
目的交際貢献、技能移転日本の人手不足解消
求められる技能水準なし(未経験でも可)相応程度の知識又は経験が必要
在留資格「技能実習」「特定技能」
在留期間1号:1年以内
2号:2年以内
3号:2年以内
(合計最大5年)
特定技能1号:最大5年
特定技能2号:制限なし
資格取得要件なし(介護のみN4レベルの日本語能力要件あり)技能水準・日本語能力水準の試験等の実施(技能実習2号を良好に修了した者は試験等を免除)
受け入れ可能業種85職種156作業14業種
転職不可可能(異業種に転職する場合、在留資格の変更が必要)

特定技能「ビルクリーニング」の資格取得要件

資格取得の要件

特定技能1号「ビルクリーニング」の資格取得は、建物清掃に必要な特定技能1号認定であり、「技能試験」と「日本語能力試験」に合格する必要があります。これらの試験により、スキルと知識が評価されます。

受験資格と欠格事由

受験資格

特定技能「ビルクリーニング」の資格を取得するには、17歳以上の外国人であり、国内試験を受ける場合は「中長期在留者」または「過去に中長期在留者として在留した経験がある者」である必要があります。

欠格事由

退学・除籍処分を受けたことがある留学生、失踪した技能実習生、在留資格「特定活動(難民申請)」により在留している者、現在技能実習を行っている者は受験できません。

特定技能「ビルクリーニング」の資格取得を目指す際は、上記の要件を満たす必要があります。不適格者に該当しないよう、事前に確認することが重要です。受験案内には、試験の場所、海外試験の選択肢、試験科目、合格基準、判断試験と実技試験の違いなど、試験プロセスに関する詳細な情報が含まれています。

技能試験の概要

ビルクリーニング分野の技能試験は、「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」と呼ばれます。この試験は、実務経験のない方でも受験可能です。

試験内容

学科試験

ビルクリーニングに関する基礎知識をカバーします。

実技試験

床面の清掃、ガラス面の洗浄、洋式トイレの日常清掃など、具体的な清掃作業の評価を行います。

日本語能力試験の要件

日本語能力については、以下のいずれかの試験に合格する必要があります。

  1. 日本語能力試験(JLPT)N4以上

  2. 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)

特定技能「ビルクリーニング」で許可される業務内容

特定技能「ビルクリーニング」では、以下の業務が認められています。

メイン業務(建物内部の清掃)

・日常掃除
・定期掃除
・客室のベッドメイキング作業

付随的な業務

・資機材倉庫の整備作業

・建物外部の清掃作業(外壁、屋上等)

・客室以外のベッドメイク作業

・植栽管理作業(灌水作業等)

資機材の運搬作業

これらの作業は、建物清掃分野の特定技能評価試験に合格することで確認されたスキルを必要とする関連業務です。

禁止されている業務

  • 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく 接客業務

  • 簡易宿所、下宿、ラブホテルでの業務

雇用形態と報酬

直接雇用の必要性

特定技能「ビルクリーニング」では、直接雇用のみが認められており、派遣形態は認められていません。

雇用期間

特定技能1号の場合、最長5年間の雇用が可能です。

報酬の基準と業界平均

報酬は、日本人が従事する場合の報酬額と同等以上であることを求められます。ビルクリーニング業界の平均年収は約280万円前後とされていますが、最低賃金の上昇や人手不足の影響により、今後上昇する可能性があります。

特定技能「ビルクリーニング」の採用方法

人材募集と面接のプロセス

国内採用の場合

既に特定技能で働いている方や技能実習修了予定の方が対象。

自社で募集するか、登録支援機関や人材紹介会社を利用。

海外採用の場合

特定技能の資格要件を満たしている方や今後試験を受験予定の方が対象。

雇用契約の締結

内定者が決まりましたら、法律で定められた基準(業務内容、報酬、労働時間など)に従って雇用契約を締結します。

支援計画の策定

特定技能外国人を雇用する場合は、以下の支援を行う必要があります。

・事前ガイダンス
・出入国時の送迎
住居確保、生活に必要な契約支援
・生活オリエンテーション
・公的手続への同行
・日本語学習機会の提供
・相談、苦情への対応
・日本人との交流促進
・転職支援(必要な場合)
・定期的な面談、行政機関への報告

在留資格申請の流れ

1.必要書類の準備
2.地方出入国在留管理局への申請
3.審査・許可
4.在留資格証明書の交付
5.本人によるビザ申請

建築物環境衛生総合管理業の登録

特定技能外国人を雇用する企業は、建築物環境衛生総合管理業の登録が必要です。主な要件は以下の通りです。

物的要件

1真空掃除機
2床みがき機
3残留塩素測定器
4浮遊粉塵測定器
5一酸化炭素測定器
6二酸化炭素測定器
7温度計(0.5度目盛)
8乾湿球湿度計(0.5度目盛)
9風速計(0.2m毎秒以上の気流を測定することができる測定器)
10空気環境の測定に必要な道具(測定用スタンド等)

人的要件

①統括管理者統括管理者講習会修了者
②清掃作業監督者清掃作業監督者の資格を取得するためには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
1.ビルクリーニング技能測定に合格する。
2.建築物環境衛生管理技術者免状を取得する。
③空気環境測定実施者空気環境測定実施者の資格を取得するには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
1.空気環境測定実施者講習会を修了し、その後6年以内であること。
または、
2これまでに一度も空気環境測定実施者として登録のない建築物環境衛生管理技術者であること。
④空調環境測定実施者空調給排水管理監督者の資格を取得するためには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
1.ビルクリーニング技能検定に合格していること。
2.建築物環境衛生管理技術者免状を取得していること。
⑤従事者研修を修了していること業務に従事する人は全員受ける必要がある。

その他の要件

作業方法および機械器具等の維持管理方法が、厚生労働省の告示に示されたすべての基準を満たしている必要があります。

ビルクリーニング分野特定技能協議会への加入

外国人労働者の受入れを行う場合、ビルクリーニング分野特定技能協議会に加入する必要があります。
この協議会は、特定技能外国人の受入れを円滑に進めるために設立された組織で、特定技能外国人の受入れに関する情報共有などを行います。協議会の役割は、特定技能外国人の雇用に関連する問題に対処したり、転職の支援を提供するなど、受入れ企業や外国人労働者に対するサポートを行うことです。

採用に関わる費用

特定技能外国人の採用は、以下のような費用が発生します。

費用相場
人材紹介費(国内人材紹介会社を利用した場合)年収の30-40%
人材紹介費(海外送り出し機関を利用した場合)給与1ヶ月分又は約30万円送り出し国によっては、海外送り出し機関を経由して採用することは必須
生活支援費登録支援機関に月額2-3万円/人
特定技能の書類作成委託費用行政書士に10-20万円。在留期間更新申請に毎年2-5万円程度発生
健康診断費約1万円
渡航費用10-15万円出身国により異なる

送り出し国のルールと注意点

特定技能外国人を海外から採用する場合、日本の法律だけでなく、送り出し国のルールにも注意が必要です。多くの東南アジア諸国では、政府が認定した送り出し機関を通じて採用することが義務付けられています。

例えば、フィリピンでは、POLOやPOEAといった政府機関の承認を受けた送り出し機関を利用する必要があります。これらのルールを無視して採用を行った場合、受入れ企業だけでなく、候補者にも罰則が適用される可能性があるため、十分な注意が必要です。

まとめ

特定技能「ビルクリーニング」制度は、日本の深刻な人手不足に対応するための重要な施策です。この制度を活用することで、ビルクリーニング業界は必要な人材を確保し、サービスの質を維持・向上させることができます。

採用を検討する企業は、資格要件や受入れ企業の要件、支援計画の策定など、多くの点に注意を払う必要があります。また、外国人材の受入れに伴う文化的な配慮や、きめ細かなサポートも重要です。

適切な準備と理解のもとで特定技能外国人を受け入れることで、ビルクリーニング業界全体の発展につながることが期待されます。

よくある質問(FAQ)

Q1: 特定技能「ビルクリーニング」の在留期間はどのくらいですか?
A1: 特定技能1号の場合、最長で5年間です。ただし、通常は1年、6ヶ月または4ヶ月ごとの更新が必要となります。

Q2: 特定技能と技能実習の主な違いは何ですか?
A2: 主な違いは以下の通りです。
・目的:特定技能は人手不足対策、技能実習は技能移転が主目的です。
・在留期間:特定技能1号は最長5年、技能実習は最長5年(3号まで)です。
・転職:特定技能は同じ分野内での転職が可能ですが、技能実習は原則転職できません。
・技能水準:特定技能はより高度な技能が求められます。

Q3: 特定技能「ビルクリーニング」で認められる業務内容は何ですか?
A3: 認められる主な業務内容は以下の通りです。
・建物内部の清掃(床、壁、天井、備品等)
・トイレ、浴室、キッチン等の衛生設備の清掃
・ガラス清掃
・カーペットクリーニング
・付随的な業務(軽微な植栽管理、ベッドメイキング等)
ただし、高所作業や特殊な機械を使用する作業は認められていません。

Q4: 特定技能「ビルクリーニング」の資格を取得するには何が必要ですか?
A4: 資格取得には以下が必要です。
・技能試験(ビルクリーニング分野の評価試験)に合格すること
・日本語能力試験でN4以上、または同等の日本語能力を有すること
・18歳以上であること
・健康であること
・法令を遵守する意思があること

具体的な金額は、採用方法(国内採用か海外採用か)や支援の範囲によって大きく異なります。また、これらの費用を外国人労働者に負担させることは禁止されています。

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