特定技能「製造業(素形材・産業機械製造業・電気・電子情報関連)」とは?採用方法や資格取得の要件を詳しく解説

特定技能「製造業(素形材・産業機械製造業・電気・電子情報関連)」とは?採用方法や資格取得の要件を詳しく解説

特定技能「製造業(素形材・産業機械製造業・電気・電子情報関連)」とは?

特定技能とは?

「特定技能」とは、2019年4月から導入された新しい在留資格を指します。これまで、日本政府は外国人に対する単純労働の受け入れを制限してきましたが、少子高齢化の進行に伴い、労働力不足が深刻化したため、以下の12分野において外国人の雇用が許可されることとなりました。

<12分野のリンク>

2023年6月末時点では、173,089人が働いており、製造業(素形材・産業機械製造業・電気・電子情報関連)分野は35,641人となっています。

(参考: 特定産業分野別割合(出入国在留管理庁)

特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2つのカテゴリが存在します。特定技能1号を取得するには、後述する「技能水準」と「日本語能力水準」をクリアする必要があります。在留期間は最大5年までで、通常は1年ごとに更新が必要ですが、「特定技能2号」では在留資格を何度でも更新可能で(無期限の滞在が可能)、家族の同行も認められます

令和5年6月9日の閣議決定により、特定技能の在留資格に関する制度の運用方針(分野別運用方針)が変更されました。この改定により、特定技能2号の適用分野が拡大され、新たに「製造業(素形材・産業機械製造業・電気・電子情報関連)」を含む11分野が特定技能2号の対象となりました。

製造業(素形材・産業機械製造業・電気・電子情報関連)について

製造分野で就労が可能な在留資格の1つに特定技能「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」があります。

元々は「素形材産業」という分野でしたが、2022年5月に、この分野が「素形材産業分野」「産業機械製造業分野」「電気・電子情報関連産業分野」の3つの製造分野が統合されて成立しました

この背景には、「素形材、産業機械、電気電子情報関連産業」において、複数の分野による受け入れが増加し、手続きが煩雑で負担が大きいという業界からの要望を受け、これらの分野を「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」と統合することが閣議決定されました。これに伴い、産業機械製造業分野における在留資格認定証明書の一時的な交付停止措置も解除され、特定技能外国人の受け入れが可能となります。

※入会手続き中または既に「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」に参加している事業者には、再度の入会手続きは必要ありません。

素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業界の現状

経済産業省の調査によれば、製造業全般で人手不足が深刻化しており、約8割の企業が人材確保を経営課題として挙げ、約2割ではビジネスにも影響が出ています。特に産業機械製造業では、世界的な需要拡大が期待される中、有効求人倍率が高い水準にあり、2023年には75,000人の人手不足が予測されています。

企業はデジタル化やIoT・AIの導入、女性・高齢者の雇用促進などの対策を進めていますが、国内人材だけでは解決が難しいため、特定技能制度が導入されました。2023年までに、素形材産業には最大21,500人、産業機械製造業には最大5,250人、電気・電子情報関連産業には最大4,700人の外国人を受け入れることが目標とされています。

特定技能「製造業(素形材・産業機械製造業・電気・電子情報関連)」の受入人数

特定技能「​​製造業(素形材・産業機械製造業・電気・電子情報関連)」では、当初は2019年からの5年間で最大31,450人の外国人を受け入れる計画が立てられていました。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う大きな経済変動を受けて、令和5年度末までに、特定技能1号外国人の受け入れ見込み数を最大49,750人に制限することとし、これが特定技能1号外国人の受け入れ上限となります。

業種2022年8月以前(見直し前)2022年8月以降(見直し後)
介護60,000人50,900人
ビルクリーニング37,000人20,000人
製造業(素形材・産業機械製造業・電気・電子情報関連)31,450人49,750人
建設業40,000人34,000人
造船・舶用工業13,000人11,000人
自動車整備7,000人6,500人
航空業2,200人1,300人
宿泊業22,000人11,200人
農業36,500人36,500人
漁業9,000人6,300人
飲食料品製造業34,000人87,200人
外食業53,000人30,500人

特定技能と技能実習の違い

特定技能と混同されやすいものとして、技能実習があります。しかし、両者は設立背景や雇用ルールなどで大きく異なるため、その違いを理解しておく必要があります。

主な違いは以下の通りです。

技能実習が国際貢献や技能移転を目的としている一方、特定技能は日本の人手不足解消が目的です。そのため、特定技能は相応程度の知識又は経験が求められることを前提とし、資格取得要件は厳しく、在留期間も長く、転職も可能という点が主な違いです。

技能実習特定技能
目的国際貢献、技能移転日本の人手不足解消
求められる技能水準なし(未経験でも可)相応程度の知識又は経験が必要
在留資格「技能実習」「特定技能」
在留期間1号:1年以内2号:2年以内3号:2年以内(合計最大5年)特定技能1号:最大5年特定技能2号:制限なし
資格取得要件なし(介護のみN4レベルの日本語能力要件あり)技能水準・日本語能力水準の試験等の実施(技能実習2号を良好に修了した者は試験等を免除)
受け入れ可能業種85職種156作業14業種
転職不可可能(異業種に転職する場合、在留資格の変更が必要)

特定技能「製造業(素形材・産業機械製造業・電気・電子情報関連)」の資格取得の要件とは?

資格取得の要件

①試験に合格する

特定技能1号になるためには、製造業分野特定技能1号評価試験と日本語能力試験の合格が必要です。

製造業分野特定技能1号評価試験

特定技能1号評価試験は、日本の製造業分野における外国人労働者の技能を評価するための試験です。試験対象は令和5年度から新たに下記3区分に再編されました。

①機械金属加工

②電気・電子機器組立て

③金属表面処理

日本語能力試験

特定技能1号になるには、日本語能力試験または国際交流基金日本語基礎テストJFT-Basicのいずれかを受験し、指定された合格基準を達成する必要があります。

日本語能力試験N4以上
国際交流基金日本語基礎テストA2以上

②「技能実習」から移行

技能実習2号を良好に修了することで、特定技能の在留資格を取得することができます。この場合、特定技能評価試験は免除され、在留資格変更許可申請を行うことで、特定技能の在留資格を取得できます。

下記表は、技能実習から新しい3つの区分への移行対象になります。対象業務区分に該当する作業名であれば、技能評価試験は免除されます。


特定技能1号対象業務区分
技能実習2号移行対象
職種名作業名

















機械金属加工

鋳造
鋳鉄鋳物鋳造
非鉄金属鋳物鋳造

鍛造
ハンマ鍛造
プレス鍛造

ダイカスト
ホットチャンバダイカスト
コールドチャンバダイカスト


機械加工
普通旋盤
フライス盤
数値制御旋盤
マシニングセンタ
金属金属プレス
鉄工構造物鉄工
工場板金機械板金

仕上げ
治工具仕上げ
金型仕上げ
機械組立仕上げ


プラスチック成形
圧縮成形
射出成形
インフレーション成形
ブロー成形
機械検査機械検査
機械保全機械系保全



電気機器組立て
回転電機組立て
変圧器組立て
配電盤・制御盤組立て
開閉制御器具組立て
回転電機巻線製作
塗装建築塗装
金属塗装
鋼橋塗装
噴霧塗装
溶接手溶接
半自動溶接
工業包装工業包装

特定技能1号対象業務区分
技能実習2号移行対象
職種名作業名



















電気電子機器組立て



機械加工
普通旋盤
フライス盤
数値制御旋盤
マシニングセンタ


仕上げ
治工具仕上げ
金型仕上げ
機械組立仕上げ


プラスチック成形
圧縮成形
射出成形
インフレーション成形
ブロー成形

プリント配線板製造
プリント配線板設計
プリント配線板製造
電子機器組立て電子機器組立て



電気機器組立て
回転電機組立て
変圧器組立て
配電盤・制御盤組立て
開閉制御器具組立て
回転電機巻線製作
機械検査機械検査
機械保全機械系保全
工業包装工業包装

金属表面処理

めっき
電気めっき
溶融亜鉛めっき
アルミニウム陽極酸化処理陽極酸化処理

特定技能「製造業(素形材・産業機械製造業・電気・電子情報関連)」に許される業務・雇用形態・報酬について

業務内容

特定技能人材が従事できる業務区分は、「機械金属加工」「電気電子機器組立て」「金属表面処理」の3つの区分となっています。

【業務区分と対象となる技能】定義
①機械金属加工• 鋳造 • ダイカスト • 金属プレス加工 • 工場板金 • 鍛造 • 塗装 • 電気機器組立て • 機械検査 • 機械保全 • 工業包装 • 鉄工 • 機械加工 • 仕上げ • プラスチック成形 • 溶接指導者の指示を理解し、または独自の判断に基づいて、素形材製品や産業機械などの製造工程の作業に従事します。
②電気電子機器組み立て• 機械加工 • 仕上げ • プラスチック成形 • 電気機器組立て • 電子機器組立て • プリント配線板製造 • 機械検査 • 機械保全 • 工業包装指導者の指示を理解し、または自己判断により、電気電子機器やその他の製造工程、組立工程の作業に参加します
③金属表面処理• めっき • アルミニウム陽極酸化処理指導者の指示を理解し、または独自の判断に基づいて、表面処理などの作業に参加します

雇用形態と報酬

特定技能「製造業(素形材・産業機械製造業・電気・電子情報関連)」では、直接雇用のみ認められ、派遣形態は認められません

雇用期間は「特定技能1号」の場合は最大5年間で、報酬は「日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること」が求められます。

特定技能「製造業(素形材・産業機械製造業・電気・電子情報関連)」を採用するには?

特定所属機関(受入れ企業)の要件

特定技能外国人を雇用する際、受け入れ企業側には以下2点の要件が求められます。

1:経済産業省が定めた「製造業特定技能外国人受れ入れ協議・連絡会」に加入すること

特定技能外国人を雇用する企業は、特定技能外国人の受け入れに関する協議・連絡会に参加する必要があります。この協議・連絡会では、企業間の協力を強化し、特定技能外国人の必要な受け入れをサポートします。具体的には、制度や情報の共有、法令遵守の強調、地域の労働力不足の把握、必要な対策の検討などが行われます。

(参考: 製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会(経済産業省)

2:海外人材に対して適切な支援を行うこと

特定技能制度を活用して海外人材を雇用するには、定められた支援を適切に行わなければいけません。受け入れ企業でサポートしきれない場合は、登録支援機関に支援業務を委託します。

特定技能を採用する流れ

ステップ1: 人材募集と面接

特定技能「製造業(素形材・産業機械製造業・電気・電子情報関連)」を採用するには、2つの主要な方法があります。

1. 国内から採用する場合

候補者は既に特定技能で働いているか、技能実習を修了予定の候補者です。この場合、自社で人材募集を行うことができますが、一般的には登録支援機関や国内人材紹介会社に人材紹介を依頼することが多いです。

2. 海外から採用する場合

候補者は既に特定技能の資格要件を満たしているか、将来的に技能試験や日本語試験を受験する予定の候補者です。この場合、海外派遣機関に人材募集を委託することが一般的です。

どちらの場合でも、候補者情報を元に書類審査を行い、オンラインまたは対面で面接を実施し、採用の決定を行います。

ステップ2: 雇用契約の締結

内定者が選ばれたら、法律で規定された条件(業務内容、報酬、労働時間など)を遵守して雇用契約を締結します。

ステップ3: 支援計画の策定

特定技能外国人を雇用する場合、彼らが日本で安定して働けるように支援を提供する必要があります。在留資格申請時には、この支援をどのように行うかを示す支援計画書を提出する必要があります。支援を自社で実施するのが難しい場合、登録支援機関に委託して、支援計画の策定と実施を代行してもらうことが可能です。

法律で規定されている支援内容は以下の通りです。

  • 事前ガイダンス
    労働条件、業務内容、入国手続きに関するオンラインまたは対面での説明
  • 出入国する際の送迎
    入国時に空港から事務所または住居までの送迎、帰国時に空港までの送迎
  • 住居確保・生活に必要な契約支援
    賃貸契約、銀行口座開設、契約電話の手続きなどの支援
  • 生活オリエンテーション
    日本のルール、マナー、公共交通機関の利用方法などについての説明
  • 公的手続への同行
    必要に応じて、住居地/社会保障/税金の手続きの同行、書類作成の支援
  • 日本語学習機会の提供
    日本語教室への入学案内、日本語学習教材の情報提供
  • 相談・苦情への対応
    職場や生活に関する相談や苦情に対応
  • 日本人との交流促進
    地域イベント(お祭りや行事など)の案内など
  • 転職支援(人員整理などの整理)
    雇用契約解除時の新たな就職先探しのサポートや行政手続き情報提供
  • 定期的な面談・行政機関への報告
    支援責任者が外国人労働者とその上司と定期的な面談を実施し、労働基準法の違反などがあれば行政機関に報告します。

このプロセスを遵守することで、特定技能外国人の雇用とサポートが円滑に行えます。

ステップ4: 在留資格申請を行う

支援計画が策定されたら、必要な書類を地方出入国在留管理局に提出して在留資格を申請します。申請が承認されると、証明書が発行され、候補者本人はこの証明書を持ってビザ申請を行います。在留資格申請の書類作成は、自社で行うことも可能ですが、行政書士に委託することもできます。

採用費用の相場

特定技能の採用に伴う費用は以下の通りです。

費用相場
人材紹介費(国内人材紹介会社を利用する場合)年収の30~40%
人材紹介費(海外送り出し機関を利用する場合)給与1ヶ月分or20万円〜送り出し国によっては、海外送り出し機関を経由して採用することは必須
生活支援費登録支援機関に月額2~3万円/一人
特定技能の書類作成委託費用行政書士に10〜20万円。在留期間更新申請に毎年2~5万円程度発生
健康診断費約1万円
渡航費用10〜15万円1人当たりの費用

送り出し国のルール

特定技能を海外から採用する場合、日本側の法律だけでなく、送り出し国のルールにも注意する必要があります。東南アジアの多くの国々では、その国が承認している送り出し機関を必ず通して採用することが義務付けられています。例えば、フィリピンではPOLOやPOEAという政府機関の承認を受けた上で、POEAが承認した現地の送り出し機関を通す必要があります。

これは、送り出し国側が海外で働く自国民の生命や安全を守るために設けられたルールです。送り出し機関を介さずに採用した場合、受け入れ企業だけでなく、候補者にも罰則が発生するため気をつける必要があります。

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