特定技能と技能実習の主な違い
特定技能と技能実習は、外見上似ていることがありますが、設立の背景や雇用規則などにおいて大きな違いがあり、それらの違いを理解することが重要です。
主な違いは以下の通りです。
技能実習 | 特定技能 | |
目的 | 国際貢献、技能移転 | 日本の人手不足解消 |
求められる技能水準 | なし(未経験でも可) | 相応程度の知識又は経験が必要 |
在留期間 | 1号:1年以内 2号:2年以内 3号:2年以内 合計最大5年 | 特定技能1号:最大5年 特定技能2号:制限なし |
資格取得要件 | なし(介護のみN4レベルの日本語能力要件あり) | 技能水準・日本語能力水準の試験等の実施(技能実習2号を良好に修了した者は試験等を免除) |
受け入れ可能業種 | 85職種(156作業) | 12分野(14業種) |
転職 | 不可 | 可能(異業種に転職する場合、在留資格の変更が必要) |
①制度と目的の背景
技能実習制度は、開発途上国出身の人々に日本の技術を学び、帰国後に技術を共有する国際貢献を目的としています。特定技能制度は、国内での人材不足が問題となる分野に外国人を受け入れ、彼らが特定のスキルを提供することを目的としています。2018年に法律改正により「特定技能」の在留資格が導入され、2019年4月から実施されました。
②就業可能な業務や業種
・特定技能は12分野(14職種)
・技能実習は85職種(156作業)
技能実習受け入れが許可されていても、特定技能受け入れが自動的に許可されるわけではありません。同様に、特定技能受け入れが可能であっても、技能実習が該当しない場合があります。両制度は独自の要件と条件を持ち、異なる資格やスキルが求められます。
③在留期間
特定技能では、在留期間を最長5年まで更新でき、2号に移行すれば期限がありません。技能実習は最長5年まで変更可能で、試験に合格する必要があり、2号からの移行が可能です。
以前は技能実習終了後に帰国が必要でしたが、特定技能制度導入により、技能実習から特定技能への切り替えが可能になり、技能を活かして日本で働き続けることができるようになりました。特定技能への移行は、技能実習2号から行えます。
④転職可能かどうか
技能実習は本来労働が主目的ではないため、転職は原則的に許可されず、就業先が変わる場合は「転籍」と呼ばれます。一方、特定技能は就労資格であるため、同一の職種であれば転職が可能です。技能実習から特定技能への移行時にも転職が許可されることがあります。
⑤受入れ方法と受入れ人数制限
・受入い方法
技能実習生は、海外の送出し機関と提携している監理団体を介してのみ受け入れが可能です。一方、特定技能の場合には特に制約がなく、受入れ企業は独自に採用したり、紹介会社を利用したりする選択肢があります。
特定技能 | 技能実習 |
制限なし | 海外の送り出し機関と提携する、監理団体からの紹介のみ |
・受入れ人数
特定技能には、通常は人数枠が設けられてません。しかし、技能実習には詳細な人数制限が存在し、受け入れ企業はそれに従う必要があります。したがって、企業が受け入れられる実習生の数には制限があり、自由に希望する人数を受け入れることはできません。
特定技能 | 技能実習 |
人数枠なし(介護、建設分野を除く) | 人数枠あり(常勤職員30名以下の企業は3名、優良企業は6名まで等) |
⑥家族帯同の可否
外国人労働者にとって、日本での長期滞在と家族の同伴は重要です。技能実習生は通常帰国を前提とした制度であるため、家族帯同は認められません。一方、特定技能の場合、1号では基本的に家族帯同は許可されていませんが、2号では配偶者とその子供の同伴が可能です。
特定技能 | 技能実習 |
1号:不可 2号:要件を満たせば可 | 不可 |
両制度のメリット・デメリット
特定技能のメリット
- 建設と介護分野を除き、受け入れ人数の制限がありません。
- 外部コストを抑えることができます。
- 受け入れ後の事務作業が比較的シンプルです。
- 国内人材も受け入れ可能で、就労までの期間が短いです。
- 技能実習からの資格変更が可能で、経験があるため即戦力となりやすいです。
- 相対的に高い日本語力を持っています。
- 付随作業もできるため、幅広い業務に従事できます。
特定技能のデメリット
- 現時点では海外での試験が限定的で、候補者の確保が難しいことがあります。
- 早期退職の可能性がある場合があります。
- 企業都合での解雇が制限されます(日本人従業員等)。
技能実習のメリット
- 長期間(3年または5年)を通じて関係性を構築できます。
- 人材の確保が比較的容易です。
技能実習のデメリット
- 外部コストが高くつくことがあります。
- 受け入れ後の事務作業が煩雑です。
- 在留資格が就労目的ではないため、従事できる作業が制限されます。
- 地域や職種によって受け入れが難しいことがあります。
- 採用から入社までに一定の期間がかかります。
技能実習から特定技能への移行
技能実習2号を2年10カ月以上修了した場合、同職種の分野に限り特定技能1号への移行が可能です。この移行には特定技能1号のための「技能試験」と「日本語能力試験」の免除が含まれており、申請方法は書類提出のみです。
具体的には、技能実習2号の在留期限が終了する前に、所轄の地方出入国在留管理局に「在留資格変更許可申請書」と特定技能1号取得に必要な書類を提出することで、特定技能1号に移行することができます。
技能実習は廃止の方向
2023年4月28日、外国人労働者のあり方を議論する政府の有識者会議では、技能実習生受入れ制度の廃止に向けた中間報告書を決定しました。今後は人材の確保と育成を目的とした、新たな制度を創設するとしています。
新しい制度の名称として「育成技能」が提案されています。この制度の目的は、国内の労働力不足に対処するため、外国人労働者を確保し、一定の専門性や技能を習得させることです。この制度の特徴は、日本語と技能の試験を必須にする点です。不合格の場合、最長1年まで在留を延長することができます。
また、受け入れ企業に関して、最初の3年間は原則的に変更ができなかった転籍制限が「人権侵害」との批判を受け、変更が可能となります。外国人が母国の送り出し機関に多額の手数料を支払って来日する問題に対処するため、企業は一定の手数料を負担する仕組みを整えることとなっています。