在留資格「介護」とは?
在留資格「介護」は、2017年9月に導入された外国人が介護施設で介護職として働くための就労系在留資格です。この在留資格は、介護福祉士の資格を持つ外国人が介護の職務を行うために必要です。この資格を持つ外国人は、日本の介護福祉士養成施設を卒業し、介護福祉士の資格を取得している必要があります。なお、介護福祉士養成施設は、都道府県知事によって指定された専門学校などで提供されています。
在留資格「介護」の受入状況
在留資格「介護」は、介護福祉士養成校を卒業した留学生や他国で介護福祉士の資格を取得した者向けの在留資格であり、その数は徐々に増加しています。これらの外国人はすでに介護福祉士としての資格、知識、技術、そして一定水準の日本語能力を持っているため、即戦力として期待されています。ただし、在留資格「介護」を持つ外国人の数はまだ比較的少なく、令和4年6月末時点で5,339人程度となっています。
在留資格「介護」の採用方法
「介護」の在留資格を取得するための採用方法は、主に以下の5つがあります。
1.介護福祉士養成施設と提携し、学生が在学中から週28時間までのアルバイトや実習を行う場を提供し、介護福祉士の国家試験に合格した後に雇用する方法です。
2.ハローワークや外国人採用に特化した雇用サービスセンターを通じて求人広告を出し、人材紹介サービスを利用して介護職員を採用する方法です。
3.専門の人材紹介会社を活用して、介護スタッフを採用する方法です。
4.EPA(経済連携協定)の介護福祉士候補生を受け入れ、彼らが介護福祉士の国家試験に合格後に在留資格「介護」に切り替えて雇用する方法です。
5.特定技能や技能実習生を受け入れ、彼らが滞在期間中に介護福祉士の国家試験に合格し、在留資格「介護」に切り替えて雇用する方法です。
在留資格「介護」を持つ労働者は比較的少なく、専門の採用支援組織も存在しないため、これらの方法を活用しながら、適切なタイミングで資格を持つ介護職員を採用する必要があります。また、育成プログラムを通じて介護福祉士の資格を持つスタッフを育てる選択肢も検討されています。
取得在留資格「介護」の資格方法
<養成施設ルート>
①外国人留学生として入国
②介護福祉士養成施設(2年以上の学習を行う)
③介護福祉士の国家資格を取得
④介護福祉士として業務従事
<実務経験ルート>
①技能実習生として入国
②介護施設で就労・研修(3年以上)
③介護福祉士の国家資格を取得
④介護福祉士として業務従事
4つの在留資格の違い
以下の表にそれぞれの違いを記載しています。
在留資格「介護」 | 特定技能 | 技能実習 | EPA(経済連携協定) | |
制度の目的 | 就労 | 就労 | 技術移転 | 経済連携 |
必要な資格 | 介護福祉士 | なし※介護技能評価試験に合格必要あり | なし | なし※日本での介護福祉士の資格取得を目指している |
在留できる年数 | 制限なし | 5年 | 5年 | 原則4年※資格取得後は制限なし |
日本語能力 | 日本語能力試験N2程度 | 日常会話、また介護の業務上問題ない程度 | 日本語能力試験N4程度 | 日本語能力試験N3以上 |
受入れ調整機関 | なし | なし | 各監理団体 | 公益社団法人国際厚生事業団 JICWELS |
勤務できるサービス | 制限なし | 制限あり※訪問系サービスNG | 制限あり※訪問系サービスNG | 制限あり※訪問系サービスNG |
配置基準に含められるまでの期間 | 雇用してすぐ | 雇用してすぐ | 雇用して6ヶ月※日本語能力試験N2以上の場合は雇用後すぐに可能 | 雇用して6ヶ月※日本語能力試験N2以上の場合は雇用後すぐに可能 |
在留資格「介護」を受け入れるメリットとデメリット
メリット
・従事できるサービスや在留期間に制限がない
そのため多岐にわたる介護サービスでの就業が可能
・雇用者や施設側にとって管理が容易
雇用後すぐに配置基準に含められるため、管理が容易になる
デメリット
・需要が高いため、採用の競争率が高い
公共財団法人日本介護福祉養成施設協会のデータによれば、令和3年において、介護福祉士養成施設に入学した外国人留学生の数は2,189人でした。これは令和元年から3年連続で年間2,000人以上を数えており、一定の増加傾向にあります。ただし、「技能実習」や「特定技能」などの他の在留資格と比較すると、まだ数が少ないと言えるでしょう。
在留資格「介護」を採用する際の注意点と課題
現在、在留資格「介護」を持つ多くの外国人は、介護福祉士養成施設を通じてこの資格を取得しています。しかしながら、留学生による介護福祉士国家試験の合格率は約30%と低いです。このため、令和9年3月31日までに養成施設を卒業した者に対して、介護福祉士試験に合格しなかった(又は受験しなかった)場合でも、卒業年度の翌年度から5年間は介護福祉士の資格を保持できる経過措置が設けられています。現在在留中の「介護」の養成施設卒業者には、合格者だけでなく、合格しなかった者や試験を受けなかった者も含まれています。
厚生労働省の「学校種別 令和3年度介護福祉士国家試験受験率及び合格率」によれば、令和3年度に養成施設を卒業した留学生2,265人のうち、2,046人が試験を受験し、受験率は90.3%でした。
また、外国人介護人材の合格率に関して、経済連携協定(EPA)に基づく外国人介護福祉士候補者の合格率は約50%です。養成施設は、経過措置後に合格者数を増やすための戦略を検討する必要があります。