技能実習「介護」とは?
外国人技能実習制度は、日本に来日した開発途上地域出身者に対して、日本の技能、技術、および知識を伝授することを主要な目的としています。
このため、外国人技能実習生を受け入れる前に、次のような計画を策定する必要があります。「どの技術を、どのスケジュールで実習生に伝授するか」および「実習生が技術を習得したことをどのように確認するか」などの詳細なプランを立てる必要があります。
技能実習の「介護」は、移行の対象となる職種の1つです。
この職種において、技能実習生が従事する業務は、「身体的または精神的な障害により、日常生活を適切に過ごすのに支障を来す人々に対し、入浴、排泄、食事などの身体的な介助およびそれに関連する業務」を含むと定義されています。
技能実習「介護」の受け入れ要件
外国人技能実習の「介護職種」を受け入れる事業所は、以下の要件を満たす必要があります。
①実習実施者(受け入れ企業)に関する要件
・技能実習を実施する事業所は、介護福祉士国家試験の受験資格として認められる介護関連業務で実務経験を有することができる事業所である必要があります。
※訪問系サービスは受け入れ対象外です。
・技能実習を実施する事業所は、開設してから少なくとも3年以上の経験を持つことが必要です。
・技能実習生やその家族に違約金などを徴収していないこと。
・技能実習の責任者、技能実習指導員、生活指導員を選任すること。
※技能実習指導員は、5年以上の介護実務経験を有する者である必要があります。
※技能実習指導員は、技能実習生5名に対して1名以上選任する必要があります。
※技能実習指導員のうち、1名以上は介護福祉士や看護師などの特定の専門性を有する者である必要があります。
・実習監理を監理団体から受けること。
・技能実習生に対し、日本人と同等の報酬を支払うこと。
・4年以上にわたって技能実習生を受け入れる場合は、優良要件に適合する必要があります。
・技能実習生の受け入れ可能な人数を超えないこと。
②技能実習の内容
・入国後講習の科目を受講させること
技能実習生に、介護職種の固有要件を満たすために必要な入国後講習の科目を受講させる必要があります。
・技能が母国での習得が困難であること
技能実習生が習得する技術やスキルは、彼らの母国で容易に習得できないものである必要があります。
・単純な作業ではないこと
技能実習の内容は、単純な作業ではなく、高度な技術や専門知識が必要とされるものである必要があります。
・受け入れ企業で通常行われている業務であること
技能実習生が実習を行う内容は、受け入れ企業で通常行われている業務である必要があります。つまり、実習内容は企業の通常業務に密接に関連している必要があります。
・2年以上の受け入れの場合、移行対象職種や作業に該当すること
技能実習生を2年以上受け入れる場合、その実習内容は、移行対象職種や作業に該当する必要があります。
4つの在留資格との違いと移行方法
以下の表が、4つの在留資格の違いになります。
技能実習 | 特定技能 | EPA(経済連携協定) | 在留資格「介護」 | |
制度の目的 | 技術移転 | 就労 | 経済連携 | 就労 |
必要な資格 | なし | なし※介護技能評価試験に合格必要あり | なし※日本での介護福祉士の資格取得を目指している | 介護福祉士 |
在留できる年数 | 5年 | 5年 | 原則4年※資格取得後は制限なし | 制限なし |
日本語能力 | 日本語能力試験N4程度 | 日常会話、また介護の業務上問題ない程度 | 日本語能力試験N3以上 | 日本語能力試験N2程度 |
受入れ調整機関 | 各監理団体 | なし | 公益社団法人国際厚生事業団 JICWELS | なし |
勤務できるサービス | 制限あり※訪問系サービスNG | 制限あり※訪問系サービスNG | 制限あり※訪問系サービスNG | 制限なし |
配置基準に含められるまでの期間 | 雇用して6ヶ月※日本語能力試験N2以上の場合は雇用後すぐに可能 | 雇用してすぐ | 雇用して6ヶ月※日本語能力試験N2以上の場合は雇用後すぐに可能 | 雇用してすぐ |
技能実習「介護」を受け入れるメリット・デメリット
技能実習「介護」のメリット・デメリットになります。
メリット
原則として、技能実習2号は同じ雇用主(実習実施者)で3年間にわたり技能を修得する仕組みとなっており、これは円滑な人材育成に寄与します。技能実習生は入国前に介護や日本語に関する講習を受けており、一定の知識を持っているため、これは大きなメリットと言えます。
デメリット
技能実習を修了した後、通常は出身国に戻って日本で習得した技能を活かす必要があり、雇用期間も最長でも5年までに制限されている点です。長期的な雇用を希望する場合、特定技能資格の取得や、在留資格「介護」への切り替えが必要です。さらに、サービスの種別によっても制約があり、技能実習生が夜勤を行う場合、指導者の存在が必要など、特定の規則や要件が存在します。
移行方法
技能実習→特定技能→在留資格「介護」
技能実習2号を3年間修了して、特定技能に移行後、介護福祉士資格を取得することは、資格取得のスピードに関して挑戦的な課題であることを考慮すべきです。
技能実習生が入国時に介護に関する知識を持っていない場合、その知識を身につけ、実務経験を積んでも、試験に合格するまでの過程は容易ではありません。試験に合格するためには、適切な学習と準備が必要であり、時間と努力がかかることが一般的です。したがって、特定技能に移行後できるだけ早く介護福祉士資格を取得するためには、着実な学習計画を立て、資格取得のために必要な要件を満たす努力が不可欠です。
技能実習「介護」を受け入れる際の注意点と課題
①技能実習生の期間
技能実習制度において、技能実習生の受け入れ可能な期間は最大で5年間とされています。しかし、この期間内で在留資格を変更するには、1号 → 2号 → 3号などのステップを踏むために特定の要件をクリアしなければなりません。
在留資格(ビザ) | 在留期間 | 目標 | 移行の要件 |
技能実習1号 | 1年間 | 技能の習得 | – |
技能実習2号 | 2年間 | 技能の習熟 | ①移行対象職種・作業に該当②技能検討(初級レベル)に合格 |
技能実習3号 | 2年間 | 技能の習熟 | ①移行対象職種・作業に該当②技能検討(初級レベル)に合格③実習実施者が優良要件に適合 |
技能実習1号から2号への移行、および2号から3号への移行には、それぞれの段階に応じた技能検定の受験と合格が必要です。
さらに、1号から2号への移行には、技能実習生の従事する作業内容が「移行対象職種・作業」に該当している必要があります。
2号から3号への移行には、実習実施者と監理団体が優良要件に適合している必要があります。
②受け入い可能な人数枠
技能実習生の受け入れ人数には制限があり、受け入れ方式や技能実習の段階、実習実施者の状況によって異なる人数枠が適用されます。
通常、技能実習1号の受け入れにおいては、以下の「基本人数枠」が適用されます。
【基本人数枠】
実習実施者の常勤職員の総数(技能実習生を除く) | 技能実習生の受け入れ可能な人数枠 |
30人以下 | 3人 |
31人〜40人 | 4人 |
41人〜50人 | 5人 |
51人〜100人 | 6人 |
101人〜200人 | 10人 |
201人〜300人 | 15人 |
301人〜 | 常勤職員総数の1/20 |
技能実習2号の受け入れ時には、通常の基本人数枠の2倍の人数を受け入れることが可能です。さらに、実習実施者が優良要件に適合している場合、それ以上の人数を受け入れることも可能です。
ただし、技能実習生の総数が、事業所の常勤介護職員の総数を超えることはできません。