特定技能とは?
特定技能の概要
「特定技能」とは、日本国内で深刻な人手不足が問題視される特定産業分野(12分野)で、即戦力となる外国人材の雇用を可能にする在留資格です。この在留資格には、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2つのカテゴリが存在し、1号は12分野、2号は介護分野を除く11分野が対象です。
「特定技能1号」は、特定分野で専門知識と経験が必要とされる外国人向け在留資格です。試験を受けて取得可能で、最長在留期間は5年です。期間内に他の資格に変更しない限り、日本を離れる必要があります。
「特定技能2号」は、特定分野でより高い専門性が必要とされる外国人向け在留資格です。最初は2つの分野に限定されていましたが、2023年から11の分野に拡大されます。在留期間に制限はなく、資格取得後は家族と一緒に日本に滞在できます。
特定技能の設立背景
特定技能制度は、国内での人材不足が問題となる分野に外国人を受け入れ、彼らが特定のスキルを提供することを目的としています。2018年に法律改正により「特定技能」の在留資格が導入され、2019年4月から実施されました。
特定技能と技能実習との違い
特定技能と技能実習は、外見上似ていることがありますが、設立の背景や雇用規則などにおいて大きな違いがあり、それらの違いを理解することが重要です。
主な違いは以下の通りです。
技能実習 | 特定技能 | |
目的 | 国際貢献、技能移転 | 日本の人手不足解消 |
求められる技能水準 | なし(未経験でも可) | 相応程度の知識又は経験が必要 |
在留期間 | 1号:1年以内2号:2年以内3号:2年以内(合計最大5年) | 特定技能1号:最大5年特定技能2号:制限なし |
資格取得要件 | なし(介護のみN4レベルの日本語能力要件あり) | 技能水準・日本語能力水準の試験等の実施(技能実習2号を良好に修了した者は試験等を免除) |
受け入れ可能業種 | 85職種(156作業) | 12分野(14業種) |
転職 | 不可 | 可能(異業種に転職する場合、在留資格の変更が必要) |
特定技能外国人の受け入れ要因
受け入れ企業が満たすべき要件・基準
受け入れ企業は、①受け入れ機関の基準に適合し、②雇用契約に関する基準に準拠し、③支援体制に関する基準に適合する必要があります。
①受け入れ機関の基準
こちらの基準には、出入国・労働法の違反がないことや、特定技能外国人からの保証金や違約金を課さないことなど、法令の基本的な遵守が求められています。
特に留意すべきなのは、「直近1年以内に同じ業務に従事する予定の特定技能外国人と同じ業務に従事している従業員を解雇していないか」という項目です。従業員の解雇があった場合、特定技能外国人の雇用が制限される可能性があるため、慎重に対応する必要があります。
さらに、例えば建設業の場合は、建設業の許可や建設キャリアアップシステムへの登録など、各産業ごとに独自の受け入れ基準が存在します。それゆえ、各産業分野での具体的な基準や許認可の取得状況を理解しておくことが重要です。
②雇用契約に関する基準
ここで特に重要なのは、「特定技能外国人と同じ業務に従事する場合、日本人従業員と同等以上の報酬を支払う」という点です。
特定技能外国人の給与が日本人と比較して差がある場合、在留資格申請の審査時に、その差異について合理的な理由を説明できないと、不許可の可能性が高まりますので、慎重に対処する必要があります。
さらに、福利厚生などの各種手当に関しても、差別的な扱いがなされていないかどうかに留意し、申請許可を得るためには十分な注意が必要です。
③支援体制に関する基準
最後に、特に留意すべきなのは、「支援体制に関する基準」です。
簡単にまとめると、「過去2年間で外国人を受け入れたことがある企業の従業員」または、「過去2年間で外国人社員への生活相談等に従事した経験のある従業員」を担当者として選任し、国が規定する「義務的支援」を特定技能外国人に提供する必要があります。
そのため、初めて外国人を受け入れる企業は、ほぼ基準を満たすことが難しい状況です(ただし、過去2年間で外国人への生活相談経験を客観的に証明できる場合は可能です)。
しかし、この基準をクリアできない場合でも、特定技能外国人を受け入れることはできます。その代わりに、「登録支援機関」と呼ばれる第三者機関に義務的支援を委託することで、支援体制に関する基準を満たしたとみなされます。
この「登録支援機関」は、出入国在留管理庁の認可を受けた企業のみが活動を認められており、外国人材の紹介や在留資格の申請サポートなど、特定技能外国人の受け入れに関する包括的なサポートを提供する民間企業です。もし自社での対応が難しい場合や支援体制の基準をクリアできない場合は、登録支援機関の利用を検討することをお勧めします。
特定技能外国人が満たすべき要件・基準
外国人が特定技能として就労するための要件・基準です。特定技能外国人になるには、以下の2つが存在します。
①試験に合格する
特定技能評価試験
12の産業分野ごとに独自に実施されており、基本的にはペーパーテストが主体ですが、一部の分野では実技試験も行われることがあります。また、一部の国では、日本国政府と締結した二国間協定に基づいて特定技能評価試験が実施されています。
日本語能力試験
「日本語能力試験(N4以上)」または「国際交流基金基礎テスト(A2以上)」のいずれかに合格する必要があります。この試験は、日本国内だけでなく、国外でも実施されています。
試験に合格すると、産業分野の技能評価試験および日本語試験の合格証書が交付されます。したがって、企業は面接時に、自社が関連する産業分野の技能評価試験および日本語試験に合格しているかを確認することが重要です。
②技能実習を修了する
「技能実習2号」と「技能実習3号」を修了している場合、先に紹介した「特定技能評価試験」と「日本語試験」は免除されます。
これは、既に3年以上の技能実習生経験があり、一定の日本語能力と技能を備えていると見なされるためです。ただし、試験が免除されるのは、技能実習時と同じ業種・分野で「特定技能1号」へ移行する場合に限ります。異なる分野で特定技能に移行する場合には、「特定技能評価試験」と「日本語試験」に合格する必要があります。
特定技能外国人の採用方法
既に特定技能として働いている
前職とは異なる分野への転職を検討する場合は、新しい分野の特定技能評価試験に合格しているかを確認することが重要です。
また、前職の退職日が確定しているか、さらには受け入れ機関や登録支援機関からの了承を得ているかも同時に確認すると良いでしょう。
これから特定技能になる
技能実習修了者が特定技能に転換する場合、技能実習時の作業内容と特定技能時の分野が一致していない場合は、分野ごとの特定技能評価試験に合格する必要があります。特に、前職の受け入れ企業が提供した寮で生活していた場合、多くの場合、退職と同時に寮を離れる必要があります。これに伴い住居の支援が必要になることがあります。
一方で、留学生から特定技能に転換する場合は、週28時間の資格外活動の制限を守っているかが重要です。28時間を超えてアルバイトを行った場合、申請が不許可になる可能性が高まります。弊社の申請事例でも、不許可になるケースが多いです。
さらに、住民税や国民健康保険などの滞納がある場合も確認が必要ですので、これらの要素に留意しておくことが重要です。