はじめに
近年、日本の労働力不足が深刻化しており、自動車運送事業においても外国人材の活用が注目されています。この課題に対応するため、政府は「特定技能」という新たな在留資格を創設しました。本記事では、特定技能制度の概要と自動車運送事業における外国人材の重要性について詳しく解説します。2024年3月より、自動車運送業界の人材不足を解消するために、特定技能「自動車運送業」が導入されることが決定しました。この制度により、タクシー、バス、トラックの運転手として外国人を雇用することが可能となります。
特定技能制度とは
特定技能は、特定の産業分野で働く外国人材のための在留資格です。この制度は、深刻な人手不足に悩む産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人材の受け入れを促進することを目的としています。
特定技能1号と2号の違い
以下の表で、特定技能1号と2号の主な違いを比較します。
| 特定技能1号 | 特定技能2号 | |
| 在留期間 | 最長5年 | 更新可能 |
| 家族帯同 | 原則不可 | 可能 |
| 対象分野 | 14分野 | 2分野(建設、造船・舶用工業) |
| 技能 | 相当程度の経験・知識 | 熟練した技能 |
自動車運送業の現状
日本の自動車運送業界は、数兆円規模の市場を誇り、ECの拡大や消費者ニーズの多様化に伴い成長を続けていますが、深刻なドライバー不足と高齢化が課題となっています。このため、外国人労働者の受け入れや働き方改革が進められ、労働環境の改善が求められています。さらに、自動運転技術やAI、IoTの導入による効率化やコスト削減が進み、環境負荷を減らすためのエコドライブや電動車導入が進展しています。また、道路運送法や労働基準法に基づく厳しい規制の遵守が求められ、国際競争力の強化も重要です。国土交通大臣は自動車運送事業における許可や認可の手続きを行います。これらの多様な課題に対応しながら、自動車運送業界は技術革新や環境対策、労働環境の改善を推進しています。
地方運輸局長は国土交通大臣から委任された権限を持ち、地域の自動車運送事業の監督を行います。
自動車運送事業の特定技能
自動車運送事業は、特定技能制度の対象分野の一つです。この分野では、以下の3つの事業カテゴリーが含まれています。
登録支援機関は特定技能外国人の支援を行い、法務省に登録される。
| 貨物自動車運送事業(トラックなど) | 貨物自動車運送事業は、他人のニーズに応じて自動車で貨物を運送する事業であり、一般貨物自動車運送事業や特定貨物自動車運送事業が含まれます。 トラック運送業界では深刻な人手不足が続いており、外国人トラックドライバーの受け入れによってこの問題が大幅に改善されることが期待されています。許可の更新手続きが必要であり、これにより事業の継続が可能となります。 外国人トラックドライバーは、荷物の運送を担当し、出発前と到着後に車両の点検を行い、安全運転を心がけるほか、荷物を適切に固定し、運行記録の管理を行います。 |
| 旅客自動車運送事業(バスなど) | 旅客自動車運送事業は、他人のニーズに応じて旅客を自動車で運送する事業であり、タクシー、路線バス、貸切バスなどが該当します。バスドライバーも特定技能で受入れ可能な業種です。また公共交通の充実に貢献することが期待されています。 バス運送業の外国人ドライバーは、公共交通のバス運転手として雇用可能です。またタクシー運送業と同様に、運行前後の点検、安全な運行、乗客対応などの業務に従事します。 |
| 自動車道事業(タクシーなど) | 自動車道事業は、一般自動車道を運営し、自動車運送事業者に利用させる事業であり、主な業務は道路の管理や維持です。 タクシードライバーとして外国人を雇用でき、「観光客向けのサービス」にも力を入れられます。タクシー運送業における外国人ドライバーは、運行管理者の指導のもと、運転や乗務記録の作成、乗客対応などを任されます。新任運転者研修を受けた後、日本の交通ルールやサービスマナーを理解して実務に就く流れです。 |
特定技能「自動車運送業」の資格取得要件
特定産業分野における認定基準に関する事項
技能水準及び評価方法 （技能水準）
トラック運送業
トラック運送業に従事するには、「自動車運送業分野特定技能1号評価試験（トラック）」に合格し、さらに「第一種運転免許」を取得する必要があります。この試験では、運行管理者などの指導のもと、貨物自動車運送事業における以下の能力が確認されます。
運行前後の点検
安全な運行
乗務記録の作成
荷崩れを防ぐ貨物の積付け
この試験に合格し、第一種運転免許を取得した者は、即戦力として専門的な知識や経験を持ち、業務に必要な技能を有していると認められます。
タクシー運送業
タクシー運送業に従事するには、「自動車運送業分野特定技能1号評価試験（タクシー）」に合格し、「第二種運転免許」を取得する必要があります。この試験では、運行管理者などの指導のもと、一般乗用旅客自動車運送事業における以下の能力が確認されます。
運行前後の点検
安全な運行
乗務記録の作成
乗客対応
また、この試験には第二種運転免許の学科試験に準拠した内容も含まれます。この試験に合格し、第二種運転免許を取得した者は、即戦力として専門的な知識や経験を持ち、業務に必要な技能を有していると認められます。
バス運送業
バス運送業に従事するには、「自動車運送業分野特定技能1号評価試験（バス）」に合格し、「第二種運転免許」を取得することが必要です。この試験では、運行管理者の指導のもとで以下の能力が確認されます。
- 運行前後の点検
- 安全な運行
- 乗務記録の作成
- 乗客対応
試験内容には第二種運転免許の学科試験に準拠した内容が含まれます。この試験に合格し、第二種運転免許を取得した者は、即戦力として専門的な知識や経験を持ち、業務に必要な技能を有していると認められます。
日本語能力試験（JLPT）N4以上、または国際交流基金日本語基礎テスト（JFT-Basic）に合格すること
JLPTは独立行政法人国際交流基金（JFT Basic）および公益財団法人日本国際教育支援協会（JEES）が運営しており、日本国内および海外で受験が可能です。建設業ではN4以上のレベルが求められます。JFT-Basicは独立行政法人国際交流基金（JFT Basic）が運営し、就労に際してはA2以上のレベルが必要です。試験は日本国内および海外で実施されており、試験日程は会場によって異なります。
分野の特性を踏まえて特に講じる措置
「自動車運送業分野特定技能協議会」
国土交通省は、自動車運送業分野での特定技能を運営するために「自動車運送業分野特定技能協議会」（以下「協議会」）を設立しています。協議会は、自動車運送業界の関係者や業界団体で構成され、外国人の適正な受け入れと保護に向けた情報共有や連携を図ります。
協議会は以下の役割を果たします。
受入状況の把握：特定技能1号外国人の受け入れ状況を全体的に把握します。
問題対応：問題が発生した場合に対応します。
法令遵守の啓発：法令遵守の重要性を啓発します。
転職支援と帰国支援：特定技能1号外国人が所属機関の倒産などで影響を受けた場合に、転職支援や帰国の保証を行います。
情報把握・分析：就業構造や経済情勢の変化に関する情報を収集・分析します。
交通安全と運転免許：交通安全の確保や円滑な運転免許取得に向けた対応を行います。
国土交通省又はその委託を受けた者が行う調査等に対する必要な協力
特定技能所属機関は、国土交通省またはその委託先が実施する調査や指導に対して、以下の協力を行う必要があります。
質問への回答
報告書の提出
聴取への出席
実地調査の受け入れ
これにより、調査や指導が円滑に進むよう協力します。
特定技能外国人が活動を行う事業所
特定技能雇用契約に基づいて1号特定技能外国人が活動する特定技能所属機関の事業所は、日本標準産業分類において次のいずれかの産業を行っている必要があります。
道路旅客運送業
道路貨物運送業
運転者職場環境良好度認証制度に基づく認証又は安全性優良事業所の保有
自動車運送業分野では、運行管理が不適切だと事故のリスクが高まり、運転者の労務管理が不適切だと過重労働の問題が発生する可能性があります。このため、特定技能所属機関（自動車運送事業者）には、適正な外国人受け入れを維持するために、次の要件を求めます。
一般財団法人日本海事協会が実施する運転者職場環境良好度認証制度の認証を取得すること。
トラック運送業では、全国貨物自動車運送適正化事業実施機関が認定する安全性優良事業所である必要があります。
新任運転者研修の実施
タクシー運送業およびバス運送業の特定技能所属機関は、特定技能1号の在留資格で受け入れる外国人に対して、新任運転者研修を実施する必須になります。
まとめ
特定技能制度は、自動車運送事業における人材不足の解決策として期待されています。この制度を通じて、外国人材が日本の自動車運送事業で活躍することで、業界全体の発展につながることが期待されます。
しかし、制度の適切な運用と外国人材の権利保護が重要です。受入れ企業、行政、そして外国人材自身が協力し合い、Win-Winの関係を構築することが、この制度の成功につながるでしょう。
よくある質問 (FAQ)
Q: 自動車運送事業とは？
A: 自動車を使用して人や貨物を運送する事業で、貨物自動車運送事業、旅客自動車運送事業、自動車道事業があります。
Q: 一般自動車運送業とは何ですか？
A: 一般自動車運送業は、貨物自動車運送事業の一種で、他人の需要に応じて貨物を運送する事業です。
Q: 運送業は何業に分類されますか？
A: 運送業は、大きく貨物運送業と旅客運送業に分類されます。
Q: 運送業は職業ですか？
A: はい、運送業は職業の一つです。ドライバーや物流管理者など、様々な職種があります。
