特定技能外国人の転職は、多くの方にとって関心の高いトピックです。本記事では、特定技能外国人での転職する際の手続きや注意点について詳しく解説します。転職を考えている特定技能外国人の方や、特定技能外国人を雇用する企業の方々にとって、有益な情報となるでしょう。
はじめに
特定技能制度は、深刻な人手不足に対応するため、一定の専門性・技能を有する外国人材の受け入れを拡大することを目的として2019年4月に始まりました。この制度により、特定技能外国人は日本で働く機会を得ていますが、転職に関しては様々な疑問や誤解が存在します。
一般的に、特定技能外国人の転職は難しいと思われがちですが、実際には一定の条件のもとで転職が可能です。外国人は転職する際に手続きが複雑であったり、時間がかかったりするため、十分な準備と理解が必要です。また、技能実習生が特定技能に移行するケースも増えています。
特定技能外国人の転職の可能性
特定技能外国人の転職は、特定技能ビザの条件下で一定の自由が認められています。特定技能1号でも転職は可能ですが、いくつかの条件を満たす必要があります。
特定技能人材が転職する際、企業は新たな人材確保の課題に直面することがあります。
転職の自由と条件
特定産業分野(12分野)内での転職が可能
特定技能ビザは、日本の労働市場における人手不足を補うために、特定の産業分野において外国人労働者を受け入れる制度です。このビザでは、転職する場合でも同じ特定産業分野内であれば転職が可能です。
必要な技能試験に合格していること
特定技能ビザを取得するためには、各分野ごとに定められた技能試験に合格している必要があります。転職時に求められる技能要件は、次のように異なります。
同じ分野内での転職:同じ分野内で転職する場合には、新たに技能試験を受ける必要はありません。すでに取得した技能試験の合格資格をそのまま利用できます。
異なる分野への転職:異なる分野に転職を希望する場合は、その分野に対応する技能試験に合格しなければなりません。たとえば、農業から介護へ転職する場合、介護分野の技能試験に合格する必要があります。
在留資格変更許可申請が必要
特定技能ビザを所有している外国人が転職する時、在留資格変更許可申請をする必要があります。これは、転職後の新しい雇用先での労働が、現在の在留資格に適合していることを確認するための手続きです。
申請タイミング:転職が決まり次第、すぐに在留資格変更許可申請をする必要があります。遅延した場合、在留資格が失効し、不法滞在となるリスクがあります。
必要書類:申請には、以下のような書類が必要です。
新しい雇用契約書
転職先での労働条件に関する書類
新たな技能試験の合格証(異なる分野に転職する場合)
新しい職場の詳細情報(会社の登記簿謄本や事業内容など)
審査の内容:申請書類が提出されると、出入国在留管理庁が審査を行います。審査では、転職先が適切であり、特定技能ビザの要件を満たしているかが確認されます。
特定技能1号での転職可能性
特定技能1号の在留資格を持つ外国人も転職できます。ただし、同じ特定産業分野内での転職に限られます。
転職が認められる理由
特定技能外国人の転職が認められるのは、より良い労働条件や環境を求める権利を保障するためです。また、人材の流動性を確保し、産業全体の発展につなげる狙いもあります。
転職可能な業種と条件
特定技能外国人が転職できるのは、特定産業分野(12分野)のいずれかに該当する業種に限られます。
特定産業分野(12分野)
介護 ビルクリーニング 素形材産業 産業機械製造業 電気・電子情報関連産業 建設 造船・舶用工業 自動車整備 航空 宿泊 農業 漁業 |
必要な試験や技能実習の要件
・分野別の技能試験に合格すること ・技能実習2号を修了すること(該当する場合 |
業種・業務が変わらない場合の特例: 転職先でも業種・業務が変わらない場合、再度試験を受ける必要はありません。
転職手続きの流れ
特定技能外国人が転職する時、「旧受け入れ企業」「新受け入れ企業」そして「特定技能外国人自身」がそれぞれ手続きを行う必要があります。
旧受け入れ企業が行う手続き | 退職手続き 特定技能外国人が退職する際には、旧受け入れ企業は通常の退職手続きを行います。これは、他の従業員と同様に、労働契約の終了に伴う手続きです。 支援計画変更に係る届出 特定技能外国人が退職する時、旧受け入れ企業は支援計画の変更についての届出を行う必要があります。これは、出入国在留管理庁に対して、特定技能外国人が会社を退職したことを報告する手続きです。 変更届の提出 退職後14日以内に支援計画変更届を出入国在留管理庁に提出します。これにより、退職によって支援計画が終了することが公式に認められます。 |
新受け入れ企業が行う手続き | 受入れ企業としての登録 特定技能外国人を新たに受入れる企業は、まず受入れ企業としての登録を行う必要。これは、特定技能外国人を適法に雇用するための基本的な手続きです。 受け入れ企業登録申請 特定技能外国人の受け入れを行うためには、企業が受け入れ企業として出入国在留管理庁に登録されている必要があります。この登録が済んでいない場合は、速やかに登録申請を行います。 支援計画の作成と届出 新受け入れ企業は、特定技能外国人に対する支援計画を作成し、これを出入国在留管理庁に提出する必要があります。支援計画には、労働条件や生活支援に関する詳細が含まれます。 支援計画の作成 新しい職場での業務内容、生活支援の内容(例:日本語学習支援、住居の確保など)を具体的に計画し、文書化します。 届出の提出 支援計画を作成したら、受け入れ開始の前に出入国在留管理庁に届出を行い、承認を得ます。 |
特定技能外国人が行う手続き | 所属(契約)機関に関する届出 在留資格変更許可申請 |
これらの手続きは順序立てて行う必要があり、一つでも抜けがあると転職が円滑に進まない可能性があります。
在留資格変更許可申請のポイント
在留資格変更許可申請は、特定技能外国人の転職において最も重要な手続きの一つです。
申請に必要な書類
在留資格変更許可申請書
パスポート及び在留カード
新しい雇用契約書
新しい受入れ機関の登録証明書
その他、入国管理局が求める書類
申請にかかる時間
在留資格変更許可申請には一般的に2~3か月程度かかります。この期間中は新しい職場で働くことができないため、十分な準備期間を設けることが重要です。
申請が不許可になるケースと対処法
申請書類に不備がある場合
特定技能の要件を満たしていない場合
過去に法令違反がある場合
不許可になった場合、その理由を確認し、必要に応じて再申請や異議申し立てを行うことができます。
転職時の注意点
特定技能外国人が転職する際には、以下の点に注意が必要です。
在留期限の確認 | 転職の際は、現在の在留期限を確認し、必要に応じて在留期間更新許可申請を行う必要があります。 |
アルバイトができない期間への対応 | 在留資格変更許可申請中はアルバイトができないため、この期間の生活費を事前に準備しておくことが重要です。 |
帰国が必要になるケース | 在留資格変更許可申請が不許可になった場合や、新しい雇用先が見つからない場合は、帰国しなければならないことがあります。 |
企業側の視点:特定技能外国人の転職を防ぐためのポイント
企業が特定技能外国人の転職を防ぐには、以下のポイントに注意する必要があります。
正当な待遇の提供
適切な給与水準
特定技能ビザを持つ労働者には、日本人労働者と同等の給与水準が保証されなければなりません。
同一労働同一賃金の原則:特定技能労働者に支払われる給与は、日本人労働者と同じ業務内容であれば同等の賃金が支払われるべきです。これには、基本給、手当、ボーナスなどが含まれます。
最低賃金の遵守:各都道府県で定められている最低賃金を下回ってはいけません。最低賃金は、職種や業種に関係なく全ての労働者に適用されます。
給与の支払い方法:給与は、毎月1回以上、一定の日に現金または振込で支払われる必要があります。また、残業代や深夜勤務手当などの割増賃金も適切に支払われなければなりません。
労働時間や休暇の管理
労働時間と休暇の管理は、特定技能労働者が健全な労働環境で働けるようにするために重要です。
労働時間:1日の労働時間は通常8時間、週40時間が法定労働時間とされています。これを超える場合には、36協定に基づく時間外労働として、適切な割増賃金が支払われる必要があります。
休暇の付与:特定技能労働者にも、労働基準法に基づく有給休暇が付与されます。有給休暇は、入社後6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上を出勤した労働者に対して、最低10日間与えられます。
休日:法定休日は、毎週少なくとも1日与えられるべきです。もし法定休日に労働が発生した場合は、割増賃金が支払われる必要があります。
社会保険への加入
特定技能労働者は、日本人労働者と同様に、社会保険に加入する義務があります。社会保険は、労働者の生活保障や医療のために非常に重要です。
健康保険:労働者が病気や怪我をした際に、医療費の一部が保険でカバーされます。健康保険料は、労働者と雇用主が共同で負担します。
厚生年金保険:将来の老後資金として、労働者が年金を受け取るための制度です。こちらも労働者と雇用主が共同で負担します。
雇用保険:失業時の生活を支援するための制度で、特定技能労働者も対象となります。失業手当が支給されるため、万が一の際の生活の支えとなります。
労災保険:仕事中や通勤中に起こる事故や病気に対して、治療費や休業補償が支払われる制度です。労災保険料は雇用主が全額負担します。
適切な教育体制の整備
日本語学習支援
日本で働く特定技能労働者が職場や日常生活で円滑にコミュニケーションを取るためには、日本語能力の向上が欠かせません。
日常会話の習得:労働者が仕事を円滑に進め、日常生活での不便を減らすために、基本的な日本語会話力の習得が重要です。会社が日本語教室を提供したり、オンライン学習の機会を用意することが考えられます。
職場特有の言葉や用語の理解:業務に関連する専門用語や職場で使用される特定の言葉を理解することで、業務効率を上げることができます。実務に関連した日本語教育が求められます。
継続的な学習の機会:日本語能力試験(JLPT)の受験支援や、社内での日本語学習プログラムを継続的に提供することで、労働者の日本語能力を向上させることが可能です。
技能向上のための研修
特定技能労働者が職務をこなすだけでなく、技能をさらに向上させ、キャリアを積み上げていくためには、適切な研修が必要です。
職務に関連する技術研修:労働者が持っている技能をさらに磨くための研修プログラムを提供します。これには、新しい技術の導入や、より高度な作業のトレーニングが含まれます。
安全管理の研修:特定産業分野によっては、労働者の安全を確保するための特別なトレーニングが必要です。例えば、建設業や製造業では、労働者が安全に作業を行うための教育が重要です。
リーダーシップやマネジメントスキルの育成:長期的な雇用を見据え、労働者が将来的にリーダーや管理職としての役割を担えるように、リーダーシップやマネジメントの研修を提供することも有効です。
キャリアパスの明確化
特定技能労働者が将来的にキャリアを築いていくためには、キャリアパスの明確化が重要です。労働者が長期的に目標を持って働けるような仕組みを整える必要があります。
昇進・昇給の機会の提供:労働者が努力や成果に応じて昇進や昇給できる制度を整備します。明確な評価基準を設けることで、労働者が目指すべき目標を持てるようにします。
長期的な雇用のビジョン:労働者に対して、会社内での長期的なキャリアパスを示すことが重要です。例えば、特定技能1号から2号へのステップアップや、さらなる専門職への道筋を明確にします。
異なる職種への転職サポート:特定技能1号での経験を活かして、他の業種や職種に転職する場合のサポートを提供します。これには、異業種に転職するためのスキルや知識を身につける研修の提供が含まれます。
まとめ
特定技能外国人の転職は、一定の条件のもとで可能ですが、複雑な手続きと時間を要します。主要なポイントをまとめると以下のようになります:
特定産業分野内での転職が可能
在留資格変更許可申請が必要
手続きには時間がかかるため、十分な準備が重要
企業側も適切な待遇と環境整備が求められる
転職を検討する特定技能外国人は、自身の状況と条件をよく確認し、必要な手続きを計画的に進めることが大切です。また、受け入れ企業側も、特定技能外国人の雇用継続のために、適切な環境整備と支援を行うことが求められます。
よくある質問(FAQ)
Q: 特定技能で転職するのは難しいですか?
A: 一定の条件を満たせば転職は可能ですが、手続きが複雑で時間がかかるため、十分な準備が必要です。
Q: 特定技能1号で転職はできますか?
A: はい、特定技能1号でも同じ特定産業分野内であれば転職が可能です。
Q: 特定技能で仕事を辞めたらどうしたらいいですか?
A: 新しい雇用先を見つけ、在留資格変更許可申請を行う必要があります。申請中は働けないため、生活費の準備も重要です。
Q: 特定技能で転職が認められる理由は何ですか?
A: 外国人労働者の権利保護と産業全体の発展を促進するためです。
Q: 特定技能で転職する場合の入管手続きは?
A: 主に在留資格変更許可申請が必要です。申請には様々な書類が求められ、2~3か月程度の時間がかかります。
Q: 特定技能の転職手続きにはどのくらい時間がかかりますか?
A: 在留資格変更許可申請に2~3か月程度かかるため、全体では3~4か月以上の時間を見込む必要があります。
Q: 特定技能ビザで転職するには在留期限は?
A: 転職時に在留期限が迫っている場合は、在留期間更新許可申請も同時に行う必要があります。十分な余裕を持って手続きを開始することが重要です。