はじめに
日本のインバウンド市場において、台湾人観光客は非常に重要な存在です。台湾人観光客に関する基本情報を理解することが、効果的なインバウンド戦略において重要です。親日家として知られる台湾人は、日本文化への深い理解と高い関心を持ち、リピーター率の高さでも注目されています。本記事では、訪日台湾人の特徴や旅行傾向を分析し、効果的なインバウンド戦略について詳しく解説します。
台湾人観光客の基本データ
訪日台湾人観光客数は年々増加傾向にあり、2018年には約475万人を記録しました。この数字は、2014年の102万人と比較すると、わずか4年で4.7倍に膨れ上がったことになります。
以下の表で、訪日台湾人の基本データをまとめてみましょう。
項目 | データ |
滞在日数 | 平均4-6日間 |
訪日回数 | 初来日13.5%、リピーター86.4% |
旅行形態 | 個別手配が最多 |
旅行消費額 | 平均6.1泊一人当たり総額11.8万円 |
性別比 | 男性44%、女性56% |
このデータから、台湾人観光客の多くがリピーターであり、個別手配での旅行を好む傾向があることがわかります。また、女性の割合が若干高いのも特徴的です。
台湾人観光客の特徴
台湾人観光客の特徴について、以下の点が挙げられます。
訪問時期: 夏の長期休暇を利用して訪日する傾向がありますが、桜や紅葉の季節にも多く訪れます。
消費傾向: ショッピングに対する意欲が強く、お菓子や医薬品、美容グッズなどを購入することが一般的です。一人当たりの旅行支出は約18万円から20万円とされています。
旅行形態: 個人旅行(FIT)が進んでおり、オンラインでの旅行手配が多いですが、団体ツアーも一定数存在します。
人気観光地: 東京や大阪などの都市部だけでなく、地方への訪問も増加しています。特に北海道や沖縄、立山黒部アルペンルート、銀山温泉などが人気です。
文化的関心: 日本の歴史や文化に対する興味が高く、温泉やスキー、歴史的建造物の見学などを楽しむ傾向があります。
SNS利用: 台湾人はSNSを活用して旅行中の情報発信を行うことが多く、LINEやFacebook Messengerが特に人気です。
親日国として有名な台湾
台湾は深い親日感情を持つ国として知られています。これは、1896年から1945年までの日本統治時代への郷愁が根底にあるためです。この感情は現代の台湾人にも受け継がれ、日本に対する強い関心と愛着が根付いているのです。台湾人は日本の文化、歴史、自然景観などに深い関心を寄せており、日本の地方都市にも足を伸ばす傾向が見られます。
リピーターの割合が高い
訪日する台湾人観光客の大きな特徴は、リピーターの割合がとても高い点です。平成29年訪日外国人消費動向調査によると、観光・レジャー目的の訪日台湾人のうち80%がリピーターです。さらに、10回以上の訪日経験を持つヘビーリピーターが15%にのぼることがわかっています。これは、台湾人が日本の文化や歴史、自然景観などに深い関心を寄せており、日本の地方都市にも足を伸ばす傾向が見られるためです。
日本カルチャーへの高い興味
台湾人は普段の生活から日本に触れる機会が多く、親近感を抱きやすいものです。例えば日本が台湾を統治していた時代に学校教育で日本語を学び現在も話せる人が多いこと、街の至る所に統治時代の日本建造物が現在でもあること、日本のアニメやドラマ放送がされていることがあげられます。本来の日本文化はどういうものなのかと「カルチャー、グルメ、ファッション」などに興味を持つ台湾人が多いのです。
モノ消費からコト消費の時代
コスメ・薬・電化製品・服・バッグなど日本製品は品揃えの多さや安心・安全で信頼の高いものとされているため、訪日の目的にはショッピングを楽しむ人がほとんどです。しかし近年では越境ECの利便性が高まり、台湾の自宅から簡単に日本製品を購入できるようになりました。そのため爆買いと言われた「モノ消費」から、趣味日本や日本文化を体験する「コト消費」への傾向が強くなっています。コト消費には日本でしか食べられない旬の食材を堪能すること、台湾にはない四季を感じられるウィンタースポーツなどのアクティビティ、自然・景勝地観光や温泉体験などが人気です。
訪日時期は4月から7月が最も多い
訪日台湾人の総数は、2014年から2023年までの9年間で、約1,400万人に達しました。2019年は、コロナ前の6年連続で増加し、489万602人となりました。2023年は、420万2,400人となり、コロナ前の約86%まで回復しました。月別訪日外客数では、コロナ前の2019年までの傾向では、訪日台湾人が最も増加するのは4月から7月でした。春季から夏季にかけての時期が最も人気であったことが分かります。
台湾人観光客の期待とニーズ
台湾人観光客は、日本を訪れる際に特定の期待やニーズを持っています。彼らは特にショッピングやグルメ体験を楽しみにしており、観光地や文化体験も重視しています。
観光庁の調査によると、訪日台湾人観光客の旅行消費額は年々増加しており、特に化粧品や電化製品の購入が人気です。
ショッピング
台湾人観光客にとって、ショッピングは日本旅行の大きな楽しみの一つです。特に人気の買い物場所として以下が挙げられます:
コンビニエンスストア
ドラッグストア
空港の免税店
人気の商品カテゴリーには、化粧品、お菓子、電化製品などがあります。日本製品の品質の高さと、台湾では手に入りにくい商品への関心が高いのが特徴です。
グルメ
訪日旅行において、日本の食文化は台湾人観光客にとって大きな魅力の一つです。特に人気の日本食には以下があります:
和食
寿司
ラーメン
うどん
また、単に食事を楽しむだけでなく、料理教室や農家体験など、食文化を深く理解できるような体験型のアクティビティへの関心も高まっています。
温泉
台湾人観光客にとって、日本の温泉は特別な魅力を持っています。本場の温泉旅館での宿泊体験は、多くの台湾人の旅行目的の一つとなっています。泉質の良さはもちろん、旅館での和風のおもてなしや、浴衣体験なども人気です。
台湾人の海外旅行需要は年々増加しており、その中でも温泉体験は特に高い人気を誇っています。
台湾人観光客に人気の観光スポット
台湾は、多様な文化の影響を受けており、特に日本への旅行が人気です。台湾人観光客は、日本の美しい風景や美食、温泉などを楽しむために訪れます。
台湾の文化は、中国を含む様々な国や地域からの影響を受けており、その多様性が観光の魅力を高めています。
自然・景勝地
日本の四季折々の自然美は、台湾人観光客を魅了します。特に人気なのは:
富士山
桜の名所
紅葉スポット
雪景色が楽しめる場所
台湾には見られない四季の変化や、雄大な自然景観が大きな魅力となっています。
歴史・文化スポット
台湾人観光客は日本の歴史や文化にも強い関心を持っています。特に以下のような場所が人気です:
神社仏閣
古都(京都、奈良など)
城跡
また、茶道や着物体験などの伝統文化体験も高い人気を誇ります。
テーマパーク
日本の有名テーマパークは、台湾人観光客にとって大きな魅力です。特に人気なのは:
東京ディズニーリゾート
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン
これらのテーマパークは、台湾人にとって特別な体験を提供し、リピーター率の向上にも貢献しています。
効果的な台湾向けインバウンド戦略
SNSマーケティング
台湾では、SNSの利用率が非常に高く、特にFacebookとInstagramが人気です。16歳から64歳の層では、Facebookの利用率が90.8%、Instagramが70.6%に達しています。このため、これらのプラットフォームを活用したマーケティングが効果的です。
訪日メディアの活用
台湾には、日本旅行に特化したメディアが存在します。例えば:
樂吃購!(ラーチーゴー)
歩歩日本(ブーブーニホン)
LIVE JAPAN PERFECT GUIDE(ライブジャパンパーフェクトガイド)
これらのメディアを活用することで、台湾人観光客に効果的にリーチすることができます。
インフルエンサーマーケティング
台湾では、インフルエンサーの影響力が非常に強く、多くの人が旅行先を決める際にインフルエンサーの情報を参考にしています。そのため、台湾人インフルエンサーを活用したマーケティングが効果的です。
自治体・観光協会の取り組み事例
日本の自治体や観光協会は、台湾からの観光客を誘致するために様々な取り組みを行っています。以下にその具体的な事例を紹介します。
香川県観光協会の取り組み
香川県観光協会は、台湾のインフルエンサーを招いて視察ツアーを開催しました。99万人以上のフォロワーを持つ台湾人インフルエンサーが、直島や小豆島でのアート作品を視察し、屋島や四国水族館などを訪問。その様子をSNSで発信することで、香川県内の観光地の魅力を広めました。
岡山県の取り組み
岡山県は、台湾のインフルエンサーを招いたモニターツアーを実施しました。WEBメディアの記者やブロガー、YouTuberが参加し、県内の観光スポットや体験型コンテンツを取材。これにより、岡山の魅力がSNSやYouTubeで広く発信されました。
石川県加賀地区のファムトリップ
石川県加賀地区では、「観光資源視察+海鮮バイキング+温泉+温泉宿に宿泊」をセットにした1泊2日のファムトリップを行いました。台湾から個人旅行者向けにモニターを招き、地域の魅力を体験してもらうことで、訪日台湾人観光客の増加を図っています。
山形県飯豊町のファムトリップ
山形県飯豊町では、「スノーモービル、雪遊び、民泊・文化体験」をセットにしたファムトリップを実施しました。台湾人観光客に雪国体験と文化体験を提供し、その魅力をSNSで発信することで地域ブランド化に成功しています。
これらの取り組みは、インフルエンサーやSNSを活用して台湾人観光客に日本各地の魅力を伝えることに重点を置いています。また、地域特有の体験や文化を提供することで、リピーター獲得にもつながっています。
「インバウンドでまちあげ」の活用
「インバウンドでまちあげ」は、地方自治体の観光誘致をトータルにサポートするプロモーションサービスです。このサービスの特徴は、マイクロアド台湾が運営する台湾・香港女性向けメディア「Japaholic」を活用している点です。
Japaholicは月間250万PVを誇る人気メディアで、これを活用することで訪日観光客向けのタイアップ企画などのプロモーション支援が可能になります。また、効果測定やレポーティングまでを包括的に提供するため、自治体や観光協会にとって非常に有用なツールとなっています。
まとめ
台湾人観光客を魅了する日本の魅力は多岐にわたります。ショッピング、グルメ、温泉、自然景観、歴史文化など、様々な要素が台湾人観光客を惹きつけています。これらの魅力を効果的に伝えるためには、SNSやインフルエンサーを活用したマーケティング戦略が重要です。
また、台湾人観光客の特徴やニーズを深く理解し、それに合わせたサービスや体験を提供することが、リピーター率の向上や新規顧客の獲得につながります。今後も、日本と台湾の文化交流を深めながら、より魅力的な観光体験を創出していくことが求められるでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q:台湾人観光客が日本で特に楽しみにしているアクティビティは何ですか?
A:温泉はリラックスと健康促進を求める台湾人観光客にとって大人気のアクティビティです。加えて、テーマパーク(特に東京ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパン)は家族連れやカップルに非常に人気があります。また、日本各地でのショッピング、特に化粧品やファッションアイテム、家電製品の購入は定番の楽しみの一つです。グルメツアーも多くの観光客が楽しみにしているアクティビティで、ラーメン、すき焼き、刺身などを現地で味わうことが旅行の大きな魅力となっています。
Q:台湾人観光客の旅行シーズンやトレンドはありますか?
A:台湾人観光客の多くが、春の桜シーズンや秋の紅葉シーズンを狙って日本を訪れます。これらの季節は特に写真映えする観光地が多く、台湾でも話題になりやすいです。また、冬は北海道や東北地方での雪景色やスキーリゾートが人気です。近年では、夏の日本の祭り(花火大会や盆踊りなど)に参加する台湾人も増え、季節ごとの魅力に合わせて旅行のタイミングを選んでいることが見受けられます。
Q:台湾人観光客はどのように日本旅行の情報を収集していますか?
A:台湾人観光客はSNSやブログ、旅行サイトを通じて日本旅行の情報を収集しています。Facebook、Instagram、YouTubeなどのソーシャルメディアは重要な情報源であり、特に台湾国内のインフルエンサーやブロガーが発信する最新の旅行情報が参考にされています。口コミも非常に重視されており、友人や家族からの旅行体験が旅行先選びに大きな影響を与えています。さらに、日本の観光局や航空会社が発信する現地情報やプロモーションも人気の情報源です。
Q:台湾人観光客の旅行スタイルは?
A:台湾人の旅行スタイルは多様で、家族旅行、個人旅行、グループツアーなどが一般的です。家族旅行では、安心して楽しめる観光地やテーマパーク、子ども向けの施設が重視されます。個人旅行の場合は、自由な時間を求めて自分のペースで観光地を回るスタイルが増えており、事前に細かく計画することが特徴です。グループツアーも根強い人気があり、特に初めての日本旅行者にとって、効率的に主要観光地を巡る方法として選ばれることが多いです。
Q:台湾人観光客を対象にした効果的なインバウンド戦略は何ですか?
A:台湾人観光客を引きつけるための効果的なインバウンド戦略には、多言語対応が不可欠です。特に中国語での案内や台湾市場向けのプロモーション活動が重要となります。また、台湾人の嗜好に合わせた観光パッケージや、現地での文化体験を提供することも有効です。さらに、SNSを活用したプロモーションや、台湾の旅行エージェントとの連携による特別なキャンペーンも台湾人観光客にアピールするための効果的な方法です。
Q:台湾人観光客の旅行中の消費傾向や人気の購入商品は何ですか?
A:台湾人観光客の消費傾向として、日本の化粧品、家電、ファッションアイテムが特に人気です。日本製の化粧品はその品質と安全性から高い評価を受けており、特にスキンケア製品やメイクアップ用品がよく購入されています。家電製品も、日本の技術力や信頼性を求めて購入されることが多く、炊飯器や空気清浄機などが人気です。また、ファッションアイテムや高級ブランド品も、台湾では手に入りにくいものを求めて日本で購入する傾向があります。
Q:コロナ後の台湾人観光客の旅行意欲や動向はどう変わっていますか?
A:コロナ禍を経て、台湾人観光客の旅行意欲は徐々に回復しつつありますが、以前よりも安全性や健康志向が強調されています。旅行中の感染リスクを最小限にするため、清潔で衛生管理が徹底された宿泊施設や観光スポットが求められています。また、コロナ後は短期旅行が増加傾向にあり、リピーターも多くなっています。さらに、自然を楽しむ旅行や、混雑を避けるための地方観光地への興味が高まっています。
Q:台湾人観光客に向けた日本での観光案内やサービス提供で重要なポイントは何ですか?
A:台湾人観光客に対して重要なのは、親しみやすく、わかりやすいサービス提供です。特に言語対応においては、中国語を話せるスタッフや多言語対応の案内が重要です。また、文化的な理解や配慮も求められ、台湾と日本の違いを尊重した対応が観光客の満足度を向上させます。