不法滞在とは?定義から対策まで完全解説

不法滞在とは?定義から対策まで完全解説
目次

1. はじめに

日本で暮らす外国人の数が増加する中、「不法滞在」という言葉をよく耳にするようになりました。しかし、不法滞在とは具体的にどのような状態を指すのでしょうか?本記事では、不法滞在の定義から対策まで、詳しく解説していきます。

不法滞在とは、外国人が日本の法令に違反して滞在を続ける状態を指します。これには、不法入国や在留期間を超過して滞在するケースなどが含まれます。日本政府の統計によると、2023年1月1日時点での不法残留者数は約7万人と推計されており、依然として社会問題の一つとなっています。

本記事では、不法滞在の定義や種類、現状、リスクと結果、発覚する理由、解消方法、不法就労との関係、雇用主の注意点、そして防止策まで幅広く解説していきます。不法滞在に関する疑問を持つ方々にとって、有益な情報源となることを目指しています。

2. 不法滞在の定義と種類

不法滞在の法的定義

不法滞在とは、入管法(出入国管理及び難民認定法)に基づき、日本に適法に滞在する資格がない状態で在留することを指します。具体的には以下の2つのケースが該当します。

  1. 不法入国で在留する場合

  2. 在留期間を超えて滞在する場合

不法入国と在留期間超過の違い

  • 不法入国:正規の手続きを経ずに日本に入国し、そのまま滞在を続けるケース

  • 在留期間超過:正規の手続きで入国したが、許可された在留期間を過ぎても滞在を続けるケース

オーバーステイとの関係性

オーバーステイは、在留期間を超過して滞在することを指す俗称です。法律用語では「不法残留」と呼ばれ、不法滞在の一形態として扱われます。

3. 不法滞在の現状

日本における不法滞在者数の統計

出入国在留管理庁の発表によれば、2023年1月1日時点での不法残留者数は約7万人と推計されてます。この数字は、過去最多だった1993年の約30万人と比較すると大幅に減少していますが、依然として無視できない規模です。

不法滞在者が多い国籍

2023年1月1日から2024年7月1日までの期間における不法滞在者の国籍について、以下のデータが示されています。

  • ベトナム: 不法滞在者数は16,812人で、前年から3,104人増加しました。これは、最も多い国籍です。

  • タイ: 11,472人で、前年から1,923人増加し、2位に位置しています。

  • 韓国: 10,769人で、前年から261人の増加です。

  • 中国: 6,788人で、前年から6人の増加にとどまりました。

  • フィリピン: 4,989人で、前年から327人増加しました。

  • インドネシア: 4,094人で、前年から909人の増加です。

  • 台湾: 3,043人で、前年から170人の増加です。

  • スリランカ: 2,015人で、前年から420人の増加です。

  • カンボジア: 1,852人で、前年から667人の増加です。

  • マレーシア: 1,499人で、前年から25人の減少となりました。

このデータは、日本国内における不法滞在者の国籍別分布を示しており、特にベトナムとタイが顕著な増加を見せています。これらの国籍は、日本における労働機会を求めて来日する外国人が多いことを反映しています。特に「短期滞在」ビザを持つ者が多く、不法滞在に至るケースが目立っています。

不法滞在が社会に与える影響

不法滞在は、社会にさまざまな影響を与えます。以下にその主要な影響を詳述します。

社会保障制度への影響

不法滞在者が増加することで、社会保障制度が圧迫される可能性があります。特に高齢化が進む日本では、労働力人口の減少が懸念されており、社会保障を支えるためには安定した労働力が必要です。不法滞在者は通常、社会保障制度にアクセスできないため、彼らの存在が制度の持続可能性に影響を与えることがあります。

犯罪率の上昇

不法滞在者による犯罪が増加する傾向があります。特に、就労を目的として来日し、在留期間を超えて不法に滞在する外国人が増加しており、これに伴い犯罪も増加しています。警察庁の報告によれば、不法滞在者による凶悪犯罪や薬物事犯が顕著に増加していることが示されています。

地域社会の安全性

不法滞在者の存在は地域社会の安全性にも影響を及ぼします。住民とのトラブルや治安の悪化が懸念されており、特定の地域で不法滞在者が集まることで、周辺住民からの苦情や不安が高まることがあります。

人権と社会統合の問題

不法滞在者はしばしば劣悪な労働環境で働かざるを得ず、人権侵害のリスクが高まります。また、彼らは社会的な排除や差別に直面することが多く、これが社会統合を妨げる要因となります。特に技能実習生などは、劣悪な労働条件から逃れるために失踪し、不法滞在者となるケースもあります。

これらの要因は相互に関連しており、不法滞在問題は単なる法律的な問題ではなく、社会全体に深刻な影響を及ぼす複雑な課題であることがわかります。

4. 不法滞在のリスクと結果

法的罰則(罰金、懲役など)

不法滞在は、入管法違反として厳しく罰せられます。具体的な罰則は以下の通りです。

  • 3年以下の懲役または300万円以下の罰金

  • 場合によっては、強制退去処分の対象となる

退去強制処分の詳細

退去強制処分は、日本において不法に滞在している外国人を強制的に国外に退去させるための法的手続きです。この処分は、主に「出入国管理及び難民認定法」に基づいて行われます。

退去強制の理由

退去強制の理由は、以下のような事由に基づいています。

  • 不法入国: 有効な旅券を持たずに日本に入国した場合。

  • 不法上陸: 入国審査官から上陸許可を受けずに日本に上陸した場合。

  • 不法残留: 在留期間を超えて日本に滞在している場合。

  • 資格外活動: 在留資格で許可されてない活動を行っている場合。

  • 刑罰法令違反: 刑事事件で有罪判決を受けた場合。

手続きの流れ

退去強制手続きは、以下のステップで進行します。

  1. 違反調査: 通報などによって、退去強制事由に該当する外国人が発見されると、入国警備官による調査が行われます。

  2. 収容: 調査の結果、退去強制事由が認められた場合、収容施設に収容されることがあります。

  3. 違反審査: 入国審査官による審査が行われ、「退去強制」または「出国命令」が決定されます。

  4. 口頭審理: 異議申し立てがあった場合、特別審理官による口頭審理が行われます。

  5. 法務大臣の決裁: 最終的な判断が法務大臣によって下されます。

出国命令制度

出国命令制度は、特定の条件を満たす不法残留者が対象となります。この制度では、収容をせずに簡易な手続きで出国させることが可能です。具体的には、以下の条件を満たす必要があります。

  • 自発的に出頭し、日本から速やかに出国する意思を示すこと。

  • 不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと。

  • 過去に退去強制されたことがないこと。

影響と結果

退去強制処分を受けた場合、その後一定期間日本への再入国が禁止されます。具体的には、退去強制された日から5年または10年間、日本への上陸が拒否されることがあります。また、出国命令制度を利用した場合は、上陸拒否期間が1年と短くなります。

このように、退去強制処分は日本の入国管理政策の一環として厳格に運用されています。外国人は、日本での滞在条件を遵守することが求められています。

上陸拒否期間と再入国の制限

上陸拒否期間は、日本に不法滞在や退去強制された場合に適用される入国禁止の期間を指します。具体的には、以下のように分類されます。

  • 出国命令による上陸拒否期間: 出国命令を受けて日本から出国した者は、原則として出国した日から1年間は日本に入国できません。

  • 退去強制による上陸拒否期間: 退去強制された者は、退去強制された日から5年間の上陸拒否が課せられます。さらに、過去に複数回退去強制を受けた場合は、10年間の上陸拒否が適用されることがあります。

これらの上陸拒否期間は、法務大臣の裁量によって変更されることもありますが、基本的には法令に基づいて厳格に運用されています。特に、麻薬や覚醒剤などの重大な犯罪で有罪判決を受けた場合は、上陸拒否期間が定められず、日本への入国が永久に禁止される可能性もあります。

再入国を希望する場合、上陸拒否期間が経過した後でも、過去の不法滞在歴や法令違反が審査に影響を与えるため、必ずしも再入国が許可されるわけではありません。再入国を希望する際には、反省文や嘆願書を提出することが推奨されており、これにより許可の可能性を高めることができます。

このように、日本への再入国には厳しい条件があり、特に過去の滞在歴や法令違反がある場合は慎重な対応が求められます。

5. 不法滞在が発覚する理由

在留カードの提示義務違反

外国人は、警察官などから求められた場合、在留カードを提示する義務があります。この義務に違反すると、不法滞在の疑いで調査される可能性があります。

職場や地域からの通報

不法就労の疑いがある場合、職場の同僚や地域住民からの通報により発覚することがあります。

入国管理局による調査

出入国在留管理庁は、定期的に不法滞在者の摘発活動を行っています。これにより、不法滞在が発覚するケースもあります。

6. 不法滞在の解消方法

自主的な出頭と手続き

不法滞在状態にある外国人は、自ら出入国在留管理庁に出頭し、状況を説明することができます。この場合、以下の選択肢があります:

  1. 自主的な出国

  2. 在留特別許可の申請

出国命令制度の活用

2004年に導入された出国命令制度は、一定の条件を満たす不法滞在者に対して、刑事罰を科さずに出国の機会を与える制度です。以下の条件を満たす必要があります:

  • 自ら出頭すること

  • 速やかに出国する意思があること

  • 退去強制事由に該当しないこと

在留特別許可の可能性

在留特別許可は、法務大臣の裁量により、人道的な配慮などの観点から特別に在留を認める制度です。以下のような場合に考慮されます:

  • 日本人や永住者との婚姻関係

  • 日本で生まれ育った子供の存在

  • 犯罪歴がないこと

7. 不法就労と不法滞在の関係

不法就労の定義と罰則

不法就労とは、在留資格上認められていない就労活動を行うことを指します。罰則は以下の通りです。

  • 3年以下の懲役または300万円以下の罰金

  • 退去強制の対象となる可能性がある

雇用主側の責任と罰則

不法就労者を雇用した雇用主も、不法就労助長罪として罰せられます。

  • 3年以下の懲役または300万円以下の罰金

  • 両罰規定により、企業にも罰金刑が科される可能性がある

不法就労助長罪について

不法就労助長罪は、以下のような行為を罰するものです。

  • 不法滞在者を雇用すること

  • 不法就労をあっせんすること

  • 不法就労をさせる目的で外国人を隠蔽すること

8. 外国人労働者を雇用する際の注意点

在留資格の確認方法

外国人を雇用する際は、以下の点を確認することが重要です。

  1. 在留カードの確認

  2. 在留資格の確認

  3. 在留期間の確認

在留カードのコピー保管の重要性

雇用主は、外国人労働者の在留カードのコピーを保管する義務があります。これにより、不法就労を防ぐとともに、適切な管理を行うことができます。

不法就労を防ぐための対策

  1. 定期的な在留資格の確認

  2. 在留期間満了前の更新手続きの案内

  3. 不法就労に関する社内研修の実施

9. 不法滞在を防ぐための対策

在留期間の管理

外国人本人は、自身の在留期間を常に把握し、期限切れに注意する必要があります。スマートフォンのカレンダーアプリなどを活用し、更新時期を事前にアラートするのも効果的です。

在留資格変更・更新手続きの適切な実施

在留期間更新や在留資格変更の手続きは、期限に余裕をもって行うことが重要です。通常、在留期間満了日の3ヶ月前から申請可能です。

在留カードの常時携帯

外国人は、常に在留カードを携帯する義務があります。不携帯は罰則の対象となるため、注意が必要です。

10. まとめ

不法滞在は、外国人が日本の法令に違反して滞在を続ける状態を指します。主に不法入国と在留期間超過の2種類があり、いずれも法律違反として厳しく罰せられます。不法滞在のリスクには、罰金や懲役、退去強制処分などがあり、上陸拒否期間が設けられることもあります。

不法滞在を防ぐためには、在留期間の管理、適切な在留資格変更・更新手続き、在留カードの常時携帯が重要です。雇用主側も、外国人労働者の在留資格を適切に確認し、不法就労を防ぐ対策を講じる必要があります。

法令を遵守し、適切な在留管理を行うことで、外国人と日本社会の双方にとって良好な関係を築くことができます。不法滞在に関する疑問や不安がある場合は、最寄りの出入国在留管理局に相談することをおすすめします。

11. よくある質問(FAQ)

Q: 不法滞在とオーバーステイの違いは何ですか?
A: 不法滞在は広義の概念で、不法入国や在留期間超過などを含みます。オーバーステイは在留期間を超過して滞在することを指す俗称で、法律用語では「不法残留」と呼ばれ、不法滞在の一形態です。

Q: 不法滞在者はなぜ帰らないのですか?
A: 理由は様々ですが、母国の経済状況、日本での生活基盤の確立、家族の存在、帰国後の再入国の困難さなどが挙げられます。

Q: 不法滞在が発覚するとどうなりますか?
A: 通常、退去強制手続きが開始されます。収容、審査、退去強制令書の発付、送還という流れで処理されます。

Q: 不法滞在は犯罪ですか?
A: はい、不法滞在は入管法違反として犯罪に該当します。3年以下の懲役あるいは300万円以下の罰金が科される可能性があります。

Q: 外国人の不法就労の罰金はいくらですか?
A: 不法就労に対する罰則は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。

Q: 不法滞在で入国禁止になる期間は?
A: 退去強制処分を受けた場合は5年間、自ら出国した場合は1年間の上陸拒否期間が設けられます。

Q: 不法残留と不法在留の違いは何ですか?
A: 「不法残留」は在留期間を超過して滞在することを指し、「不法在留」は不法入国も含めた広義の不法滞在を指します。実務上、ほぼ同じ意味で使用されることが多いです。

Q: オーバーステイした場合はどうなりますか?
A: オーバーステイ(不法残留)は不法滞在として扱われ、退去強制手続きの対象となります。ただし、出国命令制度を利用できる場合もあります。

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