外国人採用に必要な書類の完全ガイド:入社前から入社後までの手続きと注意点

外国人採用に必要な書類の完全ガイド:入社前から入社後までの手続きと注意点

はじめに

近年、日本企業における外国人採用が急増しています。グローバル化に伴い、多様な人材の確保が企業の競争力向上につながるからです。しかし、外国人を採用する際には、日本人を雇用する場合とは異なる手続きや書類が必要となります。

本記事では、外国人採用に必要な書類と手続きの全体像を把握し、スムーズな採用プロセスを実現するためのガイドをお届けします。入社前の準備から入社後の管理まで、外国人雇用に関する重要なポイントを詳しく解説していきます。

外国人採用の準備段階

在留資格の確認

外国人を採用する際、最初に確認すべきは在留資格です。在留資格は、外国人が日本で行える活動を定めるものであり、就労可能な職種や期間が決められています。

在留資格の種類と在留期限の確認方法

  1. 技術・人文知識・国際業務

  2. 技能

  3. 特定技能

  4. 特定活動

  5. 永住者

  6. 日本人の配偶者等

在留資格の確認は、外国人本人が所持する在留カードで行います。在留カードには、在留資格の種類と在留期限が記載されています。

在留カードの確認ポイント

  1. 在留資格の種類

    • 確認内容: 在留カードに記載された在留資格の種類は、外国人が日本で行える活動を示します。たとえば、「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」など、各資格には対応する業務内容が決まっています。採用しようとしている職種や業務内容が、在留資格に合致していることを確認する必要があります。

    • 確認方法: 在留カードの表面に記載された「在留資格」の欄を確認します。例えば、「技術・人文知識・国際業務」や「技能」、または「特定活動」などの具体的な資格名が記載されています。

  2. 在留期限

    • 確認内容: 在留期限は、外国人が日本に滞在できる期間を示します。在留カードには、在留資格の有効期限が記載されています。期限が切れる前に、必要な手続き(更新など)を行う必要があります。

    • 確認方法: 在留カードの「在留期限」の欄に記載された日付を確認します。例えば、「2025年6月30日」などの形式で記載されており、期限が近づいている場合は、更新手続きを考慮する必要があります。

  3. 就労制限の有無

    • 確認内容: 在留資格には就労制限が設けられている場合があります。例えば、特定の職種や業務内容に限定されている資格や、就労が制限されている資格もあります。就労制限の有無を確認し、外国人労働者の業務内容がこれに合致していることを確認します。

    • 確認方法: 在留カードの「資格・地位」欄や「就労制限」欄に記載された情報を確認します。また、在留資格の詳細に関する説明は、日本の入国管理局の公式ガイドラインや外国人の在留資格情報に基づいて理解することが重要です。

外国人を採用する際の注意点

外国人を採用する際に注意すべきポイントについて、詳細に説明します。

労働基準法や労働安全衛生法の遵守

  • 労働基準法: 労働条件(賃金、労働時間、休暇など)を明確にし、適切に設定する必要があります。外国人労働者に対しても、正当な労働条件を提供することが求められます。労働基準法に基づき、最低賃金や残業手当の支払い、労働時間の管理が必要です。

  • 労働安全衛生法: 職場の安全と健康を守るための措置を講じる必要があります。外国人労働者にも日本の安全衛生基準を遵守するための教育や訓練を提供し、危険を回避できるようにすることが重要です。適切な防護具の提供や、作業環境の定期的なチェックも含まれます。

外国人労働者の権利保護

  • 差別の禁止: 外国人労働者に対して差別を行わないことが法的に求められています。雇用契約においても、国籍や民族に基づく差別があってはなりません。

  • 労働契約の明確化: 雇用契約は明確であり、給与、労働時間、業務内容、契約期間などが詳細に記載されている必要があります。外国人労働者が契約内容を理解できるよう、適切な言語での契約書を提供することも重要です。

  • 通訳や翻訳サービスの提供: 外国人労働者が日本語に不安がある場合、必要に応じて通訳や翻訳サービスを提供し、コミュニケーションの障壁を取り除くことが望ましいです。

健康と安全の確保

  • 健康診断: 法律に基づいて、外国人労働者に対しても定期的な健康診断を実施する必要があります。健康診断結果に基づいた適切な対応が求められます。

  • 労働環境の整備: 職場の環境が外国人労働者にとっても安全で快適であるように整備することが重要です。文化や習慣に配慮した労働環境の整備や、外国人労働者の生活習慣に対応したサポートも考慮に入れると良いでしょう。

  • 緊急対応策の整備: 緊急事態に対する対応策(避難訓練や事故時の対応マニュアルなど)を整備し、外国人労働者にも理解できるようにすることが重要です。

ビザと在留資格の確認

  • ビザの確認: 外国人労働者のビザや在留資格が、採用しようとしている業務内容に適しているか確認する必要があります。不適切なビザや在留資格での雇用は違法であり、リスクを伴います。

  • 更新手続きのサポート: ビザの更新や変更に関する手続きをサポートすることも求められます。外国人労働者がスムーズにビザ更新を行えるよう、必要な情報や手続きを案内することが望ましいです。

入社前の必要書類と手続き

労働契約の締結

外国人を採用する際は、労働契約書の作成が必要です。日本語と外国人の母国語の両方で作成することが望ましいでしょう。

雇用契約書の作成ポイント

  • 勤務地、業務内容、勤務時間

  • 給与、賞与、退職金に関する事項

  • 社会保険の加入状況

  • 契約期間(期間の定めがある場合)

就労ビザの申請

外国人が日本で働くためには、就労可能な在留資格(就労ビザ)が必要です。

在留資格認定証明書交付申請

海外から新たに外国人を雇用する場合、まず在留資格認定証明書の交付申請を行います。

在留資格変更許可申請

既に日本に滞在している外国人の場合、現在の在留資格から就労可能な在留資格への変更が必要となります。

採用面接時に確認すべき書類

外国人の採用面接では、以下の書類を確認しましょう。

  • パスポート

  • 在留カード(既に日本在住の場合)

  • 職歴・学歴証明書

これらの書類を確認することで、応募者の適格性や就労資格を事前に把握できます。

入社後の必要書類と手続き

外国人労働者を雇用する際の入社後の必要書類と手続きについて、詳細に説明します。

雇用保険の加入

雇用保険被保険者資格取得届の提出

  • 提出期限: 外国人労働者を雇用した日から5日以内

  • 提出先: ハローワーク

  • 必要書類: 「雇用保険被保険者資格取得届」

  • 内容: 労働者の氏名、住所、雇用契約の内容、職種などを記入します。雇用保険番号や資格取得日なども含まれます。

健康保険・厚生年金の加入

健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届の提出

  • 提出期限: 外国人労働者を雇用した日から5日以内

  • 提出先: 年金事務所(全国健康保険協会)

  • 必要書類: 「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」

  • 内容: 労働者の氏名、住所、生年月日、雇用契約の内容、給与額、事業所の情報などを記入します。健康保険と厚生年金保険の加入に関する情報も含まれます。

外国人雇用状況の届出

雇用状況届出書の提出方法と期限

  • 提出期限: 外国人労働者を雇い入れた日または離職した日から1ヶ月以内

  • 提出先: ハローワーク

  • 必要書類: 「外国人雇用状況届出書」

  • 内容: 外国人労働者の氏名、国籍、在留資格、雇用契約の内容、勤務先の情報、雇用形態(常用、パートタイムなど)を記入します。また、離職した場合も同様の手続きが必要です。

その他の必要な手続き

労働条件通知書の発行

  • 内容: 労働条件(賃金、労働時間、休日、勤務地など)を明記した書類を、外国人労働者に交付します。労働基準法に基づき、雇用契約の詳細を明確にすることが求められます。

雇用契約書の締結

  • 内容: 雇用契約書を作成し、外国人労働者と署名・捺印します。契約内容には、職務内容、勤務条件、給与、契約期間などが含まれます。

労働安全衛生教育の実施

  • 内容: 職場の安全と健康を確保するための教育や訓練を実施します。外国人労働者が理解しやすいように、適切な言語で説明することが重要です。

税務手続き

  • 内容: 所得税の源泉徴収や年末調整など、税務に関する手続きも適切に行う必要があります。外国人労働者の税務処理には、特に注意が必要です。

これらの手続きを適切に行うことで、外国人労働者の雇用がスムーズに進み、法令に則った適切な雇用環境を提供することができます。

外国人の就労管理

外国人労働者の就労管理においては、在留資格の適切な管理と、法令遵守が重要です。以下に詳細を記載します。

在留資格の管理

在留資格の確認と更新

  • 在留資格の確認: 外国人労働者の在留資格が業務内容に適合しているか、定期的に確認することが必要です。在留資格の種類や条件により、業務内容が制限される場合があります。

  • 在留期間更新手続きの支援

    • 手続きのタイミング: 在留資格の期限が切れる前に、更新手続きを開始します。一般的には、在留期限の3ヶ月前から手続きを行うことが推奨されます。

    • 支援内容: 外国人労働者が必要な書類を準備する際のサポートや、手続きに関するアドバイスを提供します。例えば、更新に必要な書類(在留資格更新申請書、パスポート、在留カード、雇用契約書など)を確認し、正しく提出できるようにします。

在留資格変更時の対応

  • 業務内容や職位の変更

    • 手続きの必要性: 外国人労働者が担当する業務内容や職位が変わる場合、在留資格の変更が必要になることがあります。例えば、技能実習生から専門的な業務を行う職種に変更する場合などです。

    • 対応方法: 在留資格の変更に関する申請書を作成し、必要な書類を揃えて入国管理局に提出します。変更後も、業務内容が在留資格に適合していることを確認する必要があります。

外国人の就労状況の定期確認

就労条件の遵守状況チェック

  • 労働時間:

    • 確認内容: 労働時間が法定の範囲内であるか、または労働契約に記載された条件に合致しているかを確認します。過重労働が発生しないように管理することが重要です。

  • 休日・休暇の取得状況:

    • 確認内容: 外国人労働者が適切に休日や休暇を取得できているかをチェックします。労働基準法に基づき、法定の休日や年次有給休暇が提供されることが求められます。

  • 給与支払い

    • 確認内容: 外国人労働者の給与が契約通りに支払われているか、または最低賃金法に準拠しているかを確認します。給与明細や支払い記録の管理が必要です。

在留資格と実際の業務内容の一致確認

  • 確認方法:

    • 業務内容の確認: 外国人労働者が実際に行っている業務が、付与された在留資格の範囲内であるかを定期的に確認します。例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ労働者が、本来の職務内容に従っているかをチェックします。

    • 対応: 業務内容が在留資格に合わない場合は、速やかに対応し、必要に応じて在留資格の変更申請を行うことが必要です。また、就労条件が在留資格の要件を満たしていない場合も同様に対応します。

労働契約と法令遵守の管理

労働契約の確認

  • 契約内容: 労働契約が法律に準拠しているか、また外国人労働者の在留資格に合致しているかを確認します。契約書には、給与、労働時間、業務内容、雇用期間などが明記されている必要があります。

  • 定期的な見直し: 労働契約が法令や在留資格に合致しているかを定期的に見直し、必要に応じて契約内容を更新します。

外国人採用の支援制度の活用

外国人採用に関する支援制度について、以下に詳細を記載します。

外国人雇用管理アドバイザー制度

制度の概要

  • 目的: 外国人労働者の雇用管理に関する相談や情報提供を行い、雇用主が法令を遵守し、適切な管理を行えるようサポートする制度です。

  • 対象: 外国人労働者を雇用する企業や団体が対象です。

利用方法

  • 相談受付: 各都道府県労働局において、外国人雇用管理に関する相談を受け付けています。

  • 相談手段: 電話や対面での相談が可能です。電話での相談は、事前に予約が必要な場合がありますので、各労働局の窓口に確認することが推奨されます。

  • 費用: この制度は無料で利用できます。コストを気にせず、気軽に相談することができます。

サービス内容

  • 法令の説明: 外国人労働者に関する法令(雇用保険、健康保険、労働基準法など)の説明や、法令遵守のためのアドバイスを提供します。

  • 雇用管理の支援: 労働契約の適正化や就労条件の見直しに関する相談を行います。

  • トラブル対策: 外国人労働者との間で発生する可能性のあるトラブルへの対応策についてアドバイスを提供します。

行政書士の活用

行政書士の役割

  • 手続きのサポート: 外国人採用に関する複雑な手続きや書類作成をサポートします。行政書士は法律に基づいた適切な手続きを行う専門家です。

提供されるサービス

  • 在留資格認定証明書交付申請

    • 内容: 外国人労働者が日本での就労を開始するために必要な在留資格認定証明書の交付申請を行います。

    • 手続き: 必要な書類の収集、申請書の作成、入国管理局への提出を代行します。

  • 在留資格変更許可申請:

    • 内容: 外国人労働者の業務内容や職位が変更された場合、在留資格の変更申請を行います。

    • 手続き: 変更申請に必要な書類の作成や提出、入国管理局とのやり取りをサポートします。

  • 各種届出書類の作成:

    • 内容: 外国人労働者の雇用に関する各種届出(例:雇用保険、健康保険、外国人雇用状況届出書など)の作成を行います。

    • 手続き: 必要な情報を基に届出書類を作成し、関連機関への提出を代行します。

利用のメリット

  • 専門知識: 行政書士は外国人雇用に関する法律や手続きに精通しており、正確で効率的な対応が可能です。

  • 手続きの迅速化: 書類作成や手続きの複雑さを軽減し、スムーズな対応が可能です。特に時間やリソースに制約がある場合に有効です。

  • リスク回避: 法的なリスクを最小限に抑え、適切な手続きを行うことでトラブルを防ぐことができます。

これらの支援制度を活用することで、外国人労働者の雇用管理がよりスムーズに進み、法令遵守が徹底されるとともに、採用や管理にかかる負担を軽減することができます。

まとめ

日本企業の外国人採用が増加する中で、外国人労働者の採用には特有の手続きと書類が必要です。まず、在留資格を確認し、労働基準法や安全衛生法を遵守することが求められます。入社前には労働契約書の作成や就労ビザの申請が必要で、入社後は雇用保険、健康保険、厚生年金の手続きや外国人雇用状況の届出を行います。外国人雇用管理アドバイザー制度や行政書士の活用により、法令遵守をサポートし、外国人労働者の管理をスムーズに進めることが可能です。

よくある質問(FAQ)

Q: 外国人の雇用に必要な書類は?
A: 主な必要書類には、労働契約書、在留カードのコピー、雇用保険被保険者資格取得届、健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届、外国人雇用状況届出書などがあります。

Q: 外国人の採用面接で必要な書類は?
A: 採用面接時には、パスポート、在留カード(既に日本在住の場合)、職歴・学歴証明書を確認することが推奨されます。

Q: 外国人が日本で働くためには何が必要ですか?
A: 就労可能な在留資格(就労ビザ)が必要です。また、雇用契約書の締結や各種社会保険への加入など、日本の労働法規に基づいた適切な雇用手続きが求められます。

Q: 外国人登録に必要なものは何ですか?
A: 2012年7月9日以降、外国人登録制度は廃止され、在留カード制度に移行しました。在留カードの取得には、パスポート、写真、在留資格を証明する書類などが必要です。

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